アパレル店舗が知らないとまずい売上分析の基本で脱・売れないショップ(Excelテンプレ付き)
▼2020年4月追記
コロナウイルスの流行にともなう緊急事態宣言の発令に合わせて、しばらくお休みしていたブログを再開しています。
こちらの記事を書いたのは2年以上前ですが、今やアパレル業界では倒産を間近に控えた会社が激増。生き残ったブランドもリアル店舗は完全に縮小してECシフトの流れが確定的になりました。「販売員を続ける」という選択肢が限りなくゼロになっている現在、この記事に書いている内容も古い情報になってしまったと感じています。
ということで、現在の状況について書いた下記記事も、合わせてご一読ください。
(追記ここまで)
売れないアパレルショップに足りないのは売上分析を使ったPDCA
私は元々、大手のアパレルブランド2社で合計約10年、販売員をやっていました。接客メインではなく、店舗のVMDと、副店長としてのマネジメント業務をガッツリやって来たので、数字を使ったPDCAサイクルを常に回しながら日々の数字の組み立てと、改善のアクションを行ってきました。
そもそもPDCAって?
PDCAは「Plan・Do・Check・Action」のそれぞれの頭文字を並べた言葉です。それぞれの意味は、以下のように言われています。
Plan:計画を立てる
Do:実行する
Check:評価する
Action:改善する「PDCAサイクル」という言い方もされます。P→D→C→Aときて、Aからまた次のPに進む。このサイクルを「クルクルと回し、継続的に改善する」ことが大切だと言われています。
数字から問題点を見つけ出して改善案を生み出す、と言うのはアパレルや小売業に限らず、すべてのビジネスで行われていることですが、アパレル業界で働く人は本っ当ーに数字に弱いです。
これには、店長・副店長クラスでもエクセルを使った表計算がまともにできないとか、このご時世に店舗にパソコンが常備されてないとかって言うITリテラシーの低さも関係しています。
実は私の場合も、アパレルから転職するまでは実はエクセルがほとんど使えませんでした。ただ、ブランド側がかなり細かく数字分析ができるエクセルのフォーマットを全店共通で用意していたため、ほぼ入力だけで良かったので、恵まれていましたね。
売れない原因を「スタッフのアプローチが遅い」で片づけるのはもう止めませんか?
数字の分析ができていないショップがやってしまいがちなのが、感覚的・主観的に分析をしてしまうことです。売上だけを見て「スタッフのアプローチが遅かった」と言う、お決まりの言葉を未達要因として終礼でスタッフに伝えている店長・副店長がなんと多いことか…。
それってただの精神論になってませんか?だって、それ言っても次の日に売上が回復してないでしょ?
根拠のない精神論がスタッフのモチベーションを下げている
さらに言えば、この手の精神論はスタッフの心に全く響きません。これ相当大切なので、言い方を変えて繰り返します。
あなたが「アプローチが遅い」って叱るたびにスタッフのやる気を削いでいます。そして、やる気が削がれたスタッフは、そのうちあなたの言うことをまともに聞かなくなります。しかも、表面上は言うことを聞いているフリをするので、あなたは自分の言葉が届いていると勘違いしてしまいます。
こうなった店舗は間違いなく売れません。なぜなら、誰もが手を抜いているのにあなただけが気づいていない状態だから。
スタッフの心に響かないのは数字の根拠が無く論理性に欠けているから
ちょっと叱ったぐらいでやる気を無くすとかふざけるな、と思うかもしれませんが、なぜ、あなたの言葉がスタッフには響かないのか?を考えてみないといけません。それは、フィードバックの内容に数字の根拠が無いからなんです。
今の若手スタッフは論理的でないものを徹底的に嫌がります。一昔前のように、感情をぶつけ合いながら情熱で引っ張っていくようなマネジメントのスタイルは通じないと思ってください。そんな彼ら彼女らを納得させるのは、数字です。明確な数字の根拠があった上で指導される分には、腐ることもなく納得してくれるんです。
……で、ここまでが前置きです。
それでは、ここからは実際に数字分析の考え方を説明していきます。
とりあえず先に、今回私が作った、売上分析用のエクセルのテンプレートを掲載します。ブランド側が用意していない場合は活用してくださいね。
uriage_hyou.xlsx - Google ドライブ
一応エクセルの解説
- 2017年8月から2018年7月までの1年間の分を月ごとにシートに分けてます。
- 以降は、sampleシートをコピーして自作してください
- 緑に塗っているセルに入力したら他は勝手に計算してくれます
- とりあえず目標と昨年実績は月初には入れておいて、あとは日々の実績を閉店後に入れていってください。
- 週次の数字は拾えません。コメ欄かメールかtwittterでリクエストがあれば時間があるときに作ります。
アパレル販売員が押さえておかないといけない分析の指標とは
まずは、ざっと挙げていきます。
- 売上:ショップの売上
- 来店客数:ショップに来店した客数※
- 販売客数:購入に至った客数の合計
- 販売点数:購入に至った商品点数の合計
- 客単価:購入に至ったお会計額の平均(売上÷販売客数または商品単価×セット率)
- 商品単価:購入に至った商品単価の平均(売上÷販売点数)
- セット率:購入に至った商品点数の平均(販売点数÷販売客数)
※2.来店客数は、恐らく把握していない店舗の方が多いかと思いますが、店の出入り口に来店カウンターが付いているブランドだと、来店客数をリアルタイムに把握しています。これがあると無いで、分析できる精度が、大げさでなく10倍ぐらい変わります。俗にCVR(コンバージョンレート)と呼ばれる<購入率>が算出できるためです。
来店カウンターを導入していないブランドの方が多いと仮定して、今回はこの項目は無しで話を進めますが、片手落ち感は否めません。もしも、本社やデベロッパーに対してカウンターの設置を交渉できる権限を持っている場合は、絶対に提案した方がいいです。
基本的に、日々の分析はこれらの数字を、目標対比・昨年対比・前日対比の3つの対比項目を基準に、比較しながら行います。
では、ここからは売上・来店客数を除いた各項目の解説と、代表的な改善策を具体的に説明しますが、その前に下の図を見てください。
売上は来店客数・購入率・客単価の3要素から成り立っている。客単価は商品単価とセット率から成り立っている。
これは、売上の構成要素を分解していった図です。ブランドによって各項目の呼び名は変わりますが、恐らく大手であればほとんどのブランドで使用されている考え方です。
では、詳しく解説します。
売上は来店客数×購入率×客単価でできている
売上を作る3代要素として、来店客数・購入率・客単価があります。これら3つを掛け算すると売上とイコールになります。
例)ある日のA店の実績
客数1,000(人)×購入率5.5(%)×客単価8,000(円)=¥440,000
仮に、この中のどれかを2倍にすれば売上も2倍になるわけです。そりゃそうだ。
来店客数を店舗レベルでコントロールするのは難しいため、店舗の取り組みのほとんどは購入率と客単価をどう上げるかに終始すると言っても過言ではありません。
VMDでコントロールしやすい指標=購入率(転換率・CVR)
購入率は「来店したお客様が購入に至った割合」です。言い方を変えれば「お客様をレジに送り込むことができた割合」。ブランドによって転換率と言ったり、CVR(コンバージョンレート)と言ったりします。
パーセントで表されることが多く、例えば100人中8人が購入したら、購入率8%となります。2000人中50人が購入したら、購入率2.5%となります。
購入率が高い=来店した多くのお客様に対してサービスを届けられている
購入率が高いと言うことは、それだけ高い割合のお客様がお店の商品やサービスに満足して帰ってくれた、と言うことになります。
ブランドの規模や客層にもよりますが、ショッピングモールに入るぐらいの規模のブランドであれば、接客よりもVMDでコントロールしていく方が効果的な指標です。接客のアプローチやクロージングをいくら早めたところで、来店したお客様全員をカバーすることは非現実的なためです。
一番わかりやすいのは、低単価で買いやすい商品をお店の主導線に置くパターン(ちなみに、同じ低単価商品をレジ付近に置くと、セット率と客単価アップのためのVMDになりますが、この違いは分かりますか?)。
やっぱり来店カウンターが無いアパレルブランドは致命的
先ほどから何回も説明していますが、来店カウンターを導入していないと来店客数が計測できません。来店客数を計測できないと購入率が算出できません。これはPDCAを回していく上で致命的です。購入率が測れない以上、冒頭で言っていた「アプローチが遅すぎる」を実証する数字は、いよいよ存在しないことになってしまいます。もし仮に、売上を落とした要因が本当にそうであったとしても、です。
どうしても難しければモール自体の客数をデベロッパーに共有してもらう
情報の精度はかなり落ちますが、ショッピングモールに入っているショップであれば、モール自体の来店客数をデベロッパーに教えてもらうと言う方法もあります。理論上は、モール自体への集客が多い日は、自分のショップにも来店が多いはずなので。
ただ、例えばファッションに興味が無い人を多く集めるイベント(例:おば様向けタレントのインストアイベント、アニメ映画の公開初日など)がモール内で開催されたときに、購入率が極端に低くなる、と言ったこともあり得るので、参考数値程度の信ぴょう性しかないことは留意しなければいけません。
少し話がずれましたが、図の説明に話を戻します。次は客単価について。
接客で大きく向上させることができる指標=客単価
客単価は恐らくどこのショップでも毎日追いかけている数字かと思います。
客単価は「購入に至ったお客様が払った平均金額」です。いやらしい言い方に変えれば「お客様に使わせた金額の平均」となります。客単価を構成しているのは商品単価とセット率ですね。
一般的には客単(きゃくたん)と略して呼ばれることが多いです。
例)3人の購入客が、それぞれ¥1,000、¥4,000、¥10,000のお会計の場合
(1,000+¥4,000+¥10,000)÷3=¥5,000
客単価が高い=購入に至ったお客様に深い満足度を与えることができた
客単価が高いと言うことは、購入したお客様にお店の商品やサービスに深く満足して帰ってもらえた、と言うことになります。
客単価はVMDでコントロールすることもできますが、客単価を上げることと購入率を下げることは、ある程度ニアリーイコールになります(極端な話、ただ客単価を上げたいだけなら、店の低単価商品をすべてストックに隠せば上がります。購入率や売上がどうなるかは別として。ここは説明しだすと長くなるので、割愛)。
そのため、VMDでの客単価アップは購入率の項で説明したような「レジ付近に低単価商品を置いてプラス1の提案」程度に留める場合が多く、どちらかと言えば接客メインで改善していくことが多い指標になります。
セットの提案や、いくつかの商品を選択肢として提示するときに高単価の商品に促すのもそうです。低単価商品を見ているお客様よりも、高単価の商品を見ているお客様を優先してアプローチするのもそうですね。
客単価は商品単価とセット率に分解して考える
客単価を向上させるためには、ここからさらに分解して見ていかないといけません。客単価が低い要因は、商品単価、セット率のどちらなのか?
つまり、高単価の商品が販売できていないことが問題なのか?セット売りができていないことが問題なのか?
意外とここまで掘り下げて見れている人が少なくて、なんとなく「客単価を上げるためにプロパーを積極的に売ろう」で済ませている場合が多いです。「商品単価を上げることで客単価を上げる」ことが目的であれば間違いではないのですが。。
客単価の改善のために、商品単価orセット率のどちらに重きを置くのかによって店頭で取るべきアクションは違います。数字から、問題点がどこにあるのかを見つけられるようにならなければいけません。
では、最後に日々の数値が良いor悪いの判断をするために必要な、比較対象の話を軽くして終わります。
目標対比・昨年対比・前日対比。それぞれの使いどころ
その日の実績を、上記3つの対比項目の中のどれと比較して分析するかって言うところには結構センスが出ます。もちろん、3つの項目すべてとの差額や達成率はチェックするべきなのですが、実際に翌日のための改善アクションを考えるにあたっては、そのどれかに絞らないといけません。
目標対比は基本となる指標
目標対比は当然ながら、最も基本的な指標です。さすがに月次・週次・日次の売上目標を立てていないショップはないかと思いますが、それ以外の項目に対しても目標設定ができているでしょうか?
もしできていない場合は、とにかく設定してください。最初はある程度当てずっぽうでもいいですし、同じブランドの他店から情報をもらっての流用でもいいです。
売上目標に関しては、絶対に目指すべき数字ではありますが、社内政治によって上司から高めの数字を押し付けられがちでもあります。現実とかけ離れた数字を追いかけさせても、スタッフのモチベーションは下がるだけなので、月の前半終了時点で実現不可能だと判断したら、「上司から怒られるのが店長・副店長の仕事」と割り切って、月次目標達成はきっぱり諦めましょう。週次・日次は引き続き追いかけてください。
また、販売客数・販売点数・商品単価・客単価・セット率に関しては、よほどの乖離がない限りは接客の仕方やVMDで改善していけるので、上記分析をしつつ、常に改善を繰り返しながら追いかけ続けてください。
昨年対比は最もリアルな指標
一般的に昨対(さくたい)と言われるやつで、比較対象としては最も実感に近く、かつリアルな目標として据えやすい対比項目です。
特に、毎年の年間スケジュールがしっかり決まっているブランドであれば、本社が昨年とイベントスケジュールを合わせてくるので、「昨年のセール初日と今年のセール初日」などの対比も容易でしょう。
昨対を使うにあたって、気を付けないといけないのは以下2点です。
1.日付で合わせるのではなく曜日で合わせる
例えば2017年7月1日は土曜日ですが、2016年7月1日は金曜日です。日付で合わせて同じ7月1日同士を比べても意味がありませんよね?平日と土曜日なので。
「7月第一週の土曜日」と言う合わせ方で考えましょう。
2.イベント内容が全く違う場合は一切参考にしない
例えば、一年前はやっていなかったファミリーセールを今年は開催するとします。その場合は昨対と比較することに意味がありません。この場合の昨年実績は、完全に無いものとして扱いましょう。
前日対比は使いどころを考えて
よくある前日対比を用いるパターンとしては、土曜日が売上・内容ともに目標対比や昨年対比を大きく上回ったときに、翌日の日曜には、より高い目標として前日対比を設定するパターンでしょうか。
まあ、目標よりも高く売れたって言うのは、そもそもの目標設定が甘すぎたんじゃないかって話にもなりかねませんが、その時点で最もリアルな数字が前日の実績と言うことにはなるので、スタッフのモチベーションも喚起しやすいです。「去年の自分を越える」よりも「昨日の自分を越える」の方が分かりやすいですし。
数字を見るだけではなく、何を読み取り、どんなアクションを行うのか?がすべて
と言うことで、かなり長文になりましたが数字分析で見るポイント的なものを解説しました。
ただ、数字から問題点を見つけても、それを店頭でのアクションにどう繋げるのか?は結局人の頭でしか考えられません。商品単価が低いとして、どのアイテムを翌日の強化アイテムにするのかを選ぶかによって結果は変わります。
また、今回のお話には、売れ筋アイテムなどの商品視点の分析項目は一切加味されていません。実際には、今回説明した数字に「何が売れていて何が売れていないのか?」と言う、商品視点の分析が加わって、初めてアクションに落としこめます。
そっちはそっちでまた時間があるときに書きたいのですが、かなり長くなるので今回は一旦、基礎となる分析項目のお話にとどめておきます。
今まで、数字面の分析を行わずに感覚的にやってしまっていた店長・副店長は必ず数字から改善点を見つける癖をつけましょう。大手は確実にどこもやっていることです。資金力やマンパワーで勝てないブランドが生き残るためには、戦略の強化しかありません。その第一歩として是非、導入してみてください。
それでは今日はこのあたりで。
子供服・ベビー服の販売員に求められる接客はメンズ・レディースとは別物な件
▼2020年4月追記
コロナウイルスの流行にともなう緊急事態宣言の発令に合わせて、しばらくお休みしていたブログを再開しています。
こちらの記事を書いたのは2年以上前ですが、今やアパレル業界では倒産を間近に控えた会社が激増。生き残ったブランドもリアル店舗は完全に縮小してECシフトの流れが確定的になりました。「販売員を続ける」という選択肢が限りなくゼロになっている現在、この記事に書いている内容も古い情報になってしまったと感じています。
ということで、現在の状況について書いた下記記事も、合わせてご一読ください。
(追記ここまで)
なんとなく楽しいイメージがある子供服・ベビー服ブランドの販売員の仕事
普段メンズやレディースのアパレルで働いていると、たまに考えてしまうのが「子供服とかベビー服のブランドで働いたら楽しそう」と言う現実逃避です(笑)。特に、女性の販売員で小さい子供が好きな人にとっては「かわいい赤ちゃんや子供と楽しく働いてみたい」と考えるのは、あるあるの一つです。
なんとなく、子供服・ベビー服ブランドと言うと「子供と楽しく遊びながら働ける」というイメージがあります(よね?)。
私は、某ファストファッションブランドで働いていたときに、副店長に昇進するタイミングで、子供服・ベビー服フロアの担当にブランド内異動をしました。その時の経験から、子供服・ベビー服の販売員の接客ってこんな感じだよーって言うのを、いいところ悪いところの両方説明します。
続きを読むアパレル業界でキャリアアップできない販売員にありがちな3つの特徴
▼2020年4月追記
コロナウイルスの流行にともなう緊急事態宣言の発令に合わせて、しばらくお休みしていたブログを再開しています。
こちらの記事を書いたのは2年以上前ですが、現実はもっとシビアでした。
今やアパレル業界では倒産を間近に控えた会社が激増。生き残ったブランドもリアル店舗は完全に縮小してECシフトの流れが確定的になりました。「販売員を続ける」という選択肢が限りなくゼロになっている現在、この記事に書いている内容も一部、古い情報になってしまったと感じています(今のアパレル販売員の立場は「辞めるか辞めないか」じゃなくて「少しでも早く辞めて命と生活を守れるか」のフェーズなため)。
ということで、現在の状況について書いた下記記事も、合わせてご一読ください。
(追記ここまで)
私がアパレルを辞めたとき、満足感があった
アパレルで10年働いたあとに異業種に転職した私ですが、当時はキャリアアップするために日々、努力をしてきました。ただ、最終キャリアは大手ファストファッション系SPAの副店長だったので、最後まで店長を経験することはありませんでした。
とは言え、同期が何百人もいるような大規模のブランドで副店長(しかも旗艦店でした)のポジションを勝ち取ったという自負はあって、それは生半可でない努力と、多くのしがらみに耐え抜いた忍耐があったからだと思っています。
給与面と体力面が転職の最も大きな理由ではありましたが、一方では「ここまでやったからもういいよな」と思える程度にはやり切った感・満足感もあったのでした。
続きを読むアパレル店員あるあるを挙げたけど、アカンこれ経験者しか共感できんやつや
インターネットの情報はウソばかり……そんなことを最近よく感じます。
アパレル店員あるあるなどと言っておいて「服を畳むのが上手くなる」「腰が痛くなる」などの、薄っっっぺらい内容を羅列するサイトを見るにつけ、絶対お前アパレルで働いたこと無いだろと憤慨したのでした。
アパレル経験者が書いてるサイトと、そうじゃない人が書いてるサイトの差は、見れば一瞬で分かるものです。
と言うことで、販売員を10年やっていた私が、アパレル販売員以外は一切共感できない本当のあるあるを思いつくままに挙げてみます。
1.接客にまつわるアパレル店員あるある
- お客様が店に入った瞬間、買う人か買わない人かなんとなく分かる
- 閑散期のお客様が冷たすぎて「スランプではないか」と本気で悩む
- テクニックとか知識関係なしにノリと勢いだけで接客をする販売員が実は一番売る
- 「よろしければ」と言ってアプローチする店員を見ると「雑魚め」と心の中で思う
- 思いっきりシンプルな服の接客中に「この服ってデニムに合いますか?」とお客様に質問されて我が耳を疑う
- ネイビーの服を「これは黒でしょ」とお客様から言われて、なかなか信じてもらえずにひと悶着起こる
- 顧客様の名前を思い出せないまま最後までノリきったことがある
- 新卒研修で学んだ内容のうち、店舗で役に立ったことは1割もない。
続きを読む
アパレル販売員のサービス残業が発生するまで。なぜ残業が多くなるのかを考えた
▼2020年4月追記
コロナウイルスの流行にともなう緊急事態宣言の発令に合わせて、しばらくお休みしていたブログを再開しています。
こちらの記事を書いたのは2年以上前ですが、現実はもっとシビアでした。
今やアパレル業界では倒産を間近に控えた会社が激増。生き残ったブランドもリアル店舗は完全に縮小してECシフトの流れが確定的になりました。「販売員を続ける」という選択肢が限りなくゼロになっている現在、この記事に書いている内容も一部、古い情報になってしまったと感じています(今のアパレル販売員の立場は「辞めるか辞めないか」じゃなくて「少しでも早く辞めて命と生活を守れるか」のフェーズなため)。
ということで、現在の状況について書いた下記記事も、合わせてご一読ください。
(追記ここまで)
アパレル店舗で横行しているサービス残業
アパレル販売員の仕事とは切っても切り離せないのがサービス残業です。
私は大手セレクトショップとファストファッション系のSPAブランドで合計10年ほどアパレル販売員をやっていましたが、そのどちらにもサービス残業は存在しました。セレクトショップ時代は最も多い時期で月に50時間ほど。ファスト系のブランドだと月80時間を越えるサービス残業を経験したことがあります。
続きを読むアパレル販売員がクレジットカード審査に通らない・落ちる問題
年収300万円ですら勝ち組に入るアパレル販売員の世界
私はアパレル販売員として10年ほど勤めたあとに転職し、現在は広告代理店でアパレル業界とゆるく繋がりながら働いています。
アパレル時代の最終キャリアは、某大手ファストファッションブランドの副店長でしたが、年収は30歳を過ぎているのに約300万円でした。しかも、この年収300万円と言うのは、激務と引き換えに副店長になったタイミングで、役職手当が付いたことで、なんとか得られるようになった年収です。
それまでのヒラ時代は、20代後半にも関わらず250万円にも届かないぐらいでした。月給ベースで考えると、額面で約20万円、手取りは16~17万円程度。当然ボーナスはなし!
同世代の平均年収は400万円を軽く超えてくるので、これは相当低い金額です。実際に、異業種の人がこの年収金額を聞くと「なんてひどい給料なんだ…」と同情されるかもしれません。ただ、同じようにアパレルで働いている人にとっては「うん、そのぐらいだよね」と言う感じかと思います。なんなら中小のブランドに勤めている人にとっては「300万円もらえるの?さすが大手!」と言う反応があっても不思議ではありません(よね?)。
つまり、アパレル業界と言うのはそう言う世界な訳です。
年収は低いけど欲しいものが沢山のアパレル販売員
そんな低年収のアパレル販売の仕事ですが、じゃあ私は少ない給料の中で上手く節約しながら生活していたかと言うと、これがそうでもない 笑
かつての私への自戒も込めて言うのですが、アパレルで働いている人間は、まあ金遣いが荒いんです 笑
だって、考えてもみてください?ファッションや洋服って言う、お金の掛かる趣味の筆頭に入るようなものが好きでしょうがない人種がこの業界にいるわけですよ。もう、普段から欲しいものがあってしょうがないんです。
ファッション以外の趣味があるアパレル販売員は更にツライぜ…
服にお金を使うだけではなく、それ以外の趣味も持っている場合は最悪です。まあ私なんですが。
私の場合は、まずファッション関連の消費で言えばスニーカーが最もヒドかったです。買っても履かないものも含めてスニーカーを収集していました。そして、私の不幸はそれだけじゃなかった 笑
もう一つ私には読書と言う趣味があって、ここに掛かる経費もバカにならないんです。最近はめっきり読書量も減りましたが、当時は多読家だったので、小説を週に2,3冊は読んでいました。文庫本ならまだ安上がりですが、ハードカバーだと一冊1500円ぐらいはしますし、まだ読み終わってないうちから、次々と本を買う「積ん読」癖もあったので、月に2万円ぐらいは飛んでいたかと。
それ以外にも、長期休暇になれば一人旅に行ったり、大枚叩いてチャリンコを買ってみたりと、興味の赴くままにやりたい放題です。これでパチンコか競馬でもやっていたら破産確定だったのですが、ギャンブルには一切興味が無いことだけが唯一の救いでした 笑
あとは、良いのか悪いのかプライベートで付き合う友人はあまり居なかったので、食費などの交際費はかなり少なめだったのも、なんとか浪費しながらも生きてこれた要因です。
コスメ、ネイル…アパレル女子の場合は美容に掛かる金額がツライ
女性販売員の場合でも、ファッション以外の趣味を持っていて、そちらにお金が掛かると言う人は多いでしょう。ただ、男性と圧倒的に違うのは、女子の場合はコスメやネイルなどの美容にまつわる諸々の金額が必要経費として掛かってくることです。
これは、以前ネット上で話題になったライターのトイアンナさんのツイートですが…
ざっと概算した「普通の女」をやる月々のお値段
— トイアンナ (@10anj10) 2016年9月15日
美容室(カット・パーマ) 2万
まつげエクステ 1万
ネイル 1万
化粧品買い足し 0.5万
衣料品1着買い足し 1万
ジム契約 0.5万~
息してるだけで6万円/月!
これは普段あまり美容にお金を掛けないトイアンナさんが「友人に聞いたらこれだけ掛けていると聞いてビックリした」と言う、あえて極端な例を挙げたような意図のツイートでしたが、少なからず世の男性に衝撃を与えたのでした。(ちなみに私の奥さんに見せたら「これは意識が高すぎる女子か、美容マニアの類だ」と薄化粧で仰っておりました)
私が読書だ自転車だと言って散財している横で、女性は美容にお金をせっせと使っていたわけです。しかもアパレル販売員は常にお客様の憧れでいることが要求される職業であり、一般の女性よりも美容に対する努力が必要でもありますよね。薄給でこれらの出費は痛い…。
幸か不幸か社割で好きな服が買えてしまうからこそ自制心が試される
しかも社割で服が買えるものだから、セレクトショップとかに勤めていると、自分の大好きなインポートがガンガン入荷しては30%・40%引きとかで買えてしまう。たまに、店頭に並ぶ前に社割で完売する商品とかありましたからね 笑
よくアパレル販売員の貧困が語られるときに「店の服を買わなければいけないから、ただでさえ低い給料がさらに減っていく」と言うものがありますが、これは半分正解で半分間違いだと私は思っていまして。
アパレル販売員は好き好んで店の服を買うことも…ある
私はセレクトショップに勤めていたときは、自分の欲しい服と店で扱う服がかなり被っていたので、むしろ「安く買えてラッキー」と言う感覚が強かったです。逆に、ファストファッションブランドに勤めていたときは、普段は着ないけど店頭で着用するために買っている意味合いが強かったです。
まあ、どちらにしてもお金が無くなることには変わりはありませんが 笑 ステレオタイプな<貧乏な販売員像>が各所で語られることには少し違和感があったので、書かせていただきました。むしろ、上司から購入を強制されることってこのご時世のコンプラ的には稀な話で、自ら好んで社販してる販売員も沢山いるよ、と言う話でした。「分かる分かる」と言う人も多かろうと思いますが、まあここは自制心の勝負でもありますね 笑
さて、とても長い前置きを経て今日の本題のクレジットカードの審査のお話です。
今日の本題。アパレル販売員がクレジットカード審査に通らない・落ちる問題
社会人であれば、大抵の人がクレジットカードを持っているかと思います。
私の場合は少し特殊でして。新卒で入社した某セレクトショップがクレジットカード会社と提携していたため、入社と同時に自社のロゴが入ったそこのクレジットカードを貸与されると言う、ちょっと特殊な環境でした。なので、社会人になったと同時にクレジットカードを持ち始めました。
実際にクレカを持つと、確かに便利だなと思う場面が多いものです。
何か予定外にお金が必要になったときに、銀行にお金を降ろしに行くのが難しい状況だったりしたときなんて特に。
転職を機にクレジットカードなしの生活をしてみた
ただ、そのブランドを辞めたときに、そのクレジットカードは無効化されてしまいます。その後、ファストファッションブランドに移ってからは、しばらくクレジットカードを持っていない状態が続きました。無けりゃ無いで、別に生活に致命的な支障が出るわけではなく、普通に暮らしていたのですが、そこは元来めんどくさがりな私です 笑
「しょっちゅう銀行に降ろしに行くのが面倒くさい」「ネットでの買い物がとにかく不便」「後輩とご飯に行ったときにカードで払う方が格好いい気がする(←バカ)」と言った気持ちがふつふつと湧いてきました。
そして転職から2年ほど経って、私は久しぶりにクレジットカードを作ろうかなと思い立ったのでした。今度は会社から無条件に支給されるものでなく、自力で。
いざクレジットカードを作ろうとするも…審査に通らない!
ただ、ここから実際にクレカを作るまでが意外と長かった。
と言うのも、その時の私は雇用形態も契約社員で、年収は200万円台前半。このスペックだと、なかなかクレジットカードの審査に通らないのですね。
さすがにいきなりゴールドカードを作ろうなどとは思ってはいなかったのですが、周囲の20代中盤の友人が普通に持っている、普通のステータスのクレカ審査にもバンバン落ちます。
特に過去のクレジットカード支払いや、携帯電話の料金などで滞納をしたことは無かったので、これは純粋に自分の社会的評価、と言って間違いないものです。まあ、2017年現在とその当時では、少し状況が変わっているかもなのですが「この仕事は社会的信用がそんなに低いのか!」と嘆いたものです。
と言うことで私は、年収200万円台前半の契約社員でも作れるクレジットカードを探す旅に出ることになるのでした 笑
引用:クレジットカード職業別信用度格付けランキング
※最上級を超SA、最下位を特Fとして21段階に分けています※
【超SA】 医師(国立)、国家公務員(キャリア)、検事、裁判官、日銀、大学教授(国立)
【特SA】 国家公務員、地方公務員、教員(公立)、医師(開業医)
【SA】 弁護士(ボス弁)、公認会計士(4大監査法人)、日経225役員
【A1】 外郭団体職員、パイロット、医師(勤務医)、弁護士(パートナー)
【A2】 公益法人職員、信用保証協会、公認会計士(中堅監査法人)、東証1部企業役員
【A3】 独立行政法人職員、弁護士、公認会計士、弁理士、東証1部インフラ
【B1】 大学教授(私立)、JA、労働金庫、全労済、税理士、日経225社員、その他上場企業役員
【B2】 教員(私立)、弁護士(イソ弁)、国会議員
【B3】 不動産鑑士、薬剤師、歯科医師、住職(檀家500以上)
【C1】 司法書士、都道府県会議員、東証1部社員、非上場大企業社員
【C2】 一級建築士、獣医師、教員(専門学校)、市町村会議員
【C3】 パイロット(LCC)、中小企業役員
【C4】 その他上場企業社員、看護師、行政書士
【D1】 その他非上場中小企業社員、自営業者、理容師、美容師、大学生(大学生は「親がいるから」と考えられるので意外に信用度は高い)
【D2】 塗装工、板金工、整備工、配管工、溶接工
【E1】 小売、先物、アパレル、不動産販売、農家
【E2】 警備員、清掃員(民間)、販売員、保険外交員
【E3】 大工、介護、漁師、塾・予備校講師
【F】 契約社員、タクシー運転手、芸能人、土木作業員
【F1】 フリーター、バイト、日雇い、期間工、新聞勧誘員
【特F】 無職(ニート含む)
引用元:クレジットカードの口コミ.com
ここで一旦、予備知識を。よそのサイトに掲載されていた職業別信用度なる表を転載しました。
これを見ると、アパレル販売員の属性と言うのがいかに信用度が低いかと言うのが分かりますね。【E1】の"アパレル"と言うのはアパレルの内勤、いわゆる本社勤務のスタッフですね。販売員は、さらにその下の【E2】です。
薄給激務のブラック仕事として、何かとアパレル販売員と一緒に語られがちな美容師さんよりもずっと下なわけです。
私の場合はここに契約社員と言う雇用形態の問題があったので、そりゃ審査に通らないです 笑
ワラにもすがる思いで楽天カードを申し込んだら審査に通った
世の中には、今の自分でも審査が通るクレジットカードは存在しないんじゃなかろうか…と思っていたのですが、ある日テレビのCMを見て「これじゃん!」と思ったのが楽天カードなのでした。
>>楽天カード
それまでの私はいわゆる信販系のカードを中心に審査に挑戦していたのですが、これはなんとなく自分の中で「こっちの方が大人っぽい」と言うだけの理由でした(←バカ)。
でも、実際に自分の消費行動を考えると、ファッション関連を含めて、食料以外の買い物のほとんどをamazonと楽天で済ませるぐらい、私は楽天のコアユーザーだったんですよね。多分その時点でダイヤモンド会員か何かになっていたような。
と言うか、なんで最初からこの選択肢を考えなかったのか…。
ちょっと格好悪いイメージもある楽天カードですが、単純にポイントが付くんだったらそっちの方が生活が楽になると思えば、躊躇する必要もなし。私は前向きな気持ちで楽天カードを申し込み、審査にもなんなく通り、数日後には手元にクレジットカードが届いたのでした。まあ楽天カードは大抵の人は通りますね。
ちなみに、そこから5年以上経ちますが、未だに楽天カードは私の主力のクレジットカードです。ネットの買い物などは基本的にすべて楽天カードで済ませています。格好悪かろうがなんだろうが、結局一番得なのは楽天カード。って言うのは定説ですが、本当にそれです。
て言うか、人前でカードを見せびらかすことなんてないんだから、極論、どこのクレジットカード使をってても、ステータスも何も関係無いって言うのが30歳を過ぎた私の現段階の結論です。お金持ちの社長さんで楽天カードを使ってる人も見たことありますし。
ありがとう楽天カードマン!
その後は念願のゴールドカードも作った
私は結局楽天カードと言う、何の面白みもない超絶ベタな選択肢で、無事にクレジットカードを手に入れたのですが、その後、副店長になったタイミングで、これも超定番の三井住友VISAカードのゴールドを作りました。
ほとんどありませんが、たまーにどうしても楽天カードを出しづらいとき(貧乏を隠さないといけないとき 笑)は、そちらを使っています。
まあ、さっき言ったように主力は楽天カードであることに変わりはなく、結局楽天カードが最強って言う結論にはなりますが。。
それでは今日はこのあたりで。
誰がアパレルを殺すのか:感想・書評・要約 ~古い慣習にしばられた業界を救うのは誰?~
ベストセラーになっている『誰がアパレルを殺すのか』(日経BP社)を読了しました。
アパレル業界全体が不振にあえいでいる中で、私も業界内で働く者としてアパレル再興のヒントが何か得られればと思いながら一気に読んでしまいました。
『誰がアパレルを殺すのか』の概要
アパレル業界がかつてない不振にあえいでいる。オンワードホールディングス、ワールド、TSIホールディングス、三陽商会という業界を代表する大手アパレル4社の売上高は激減。
店舗の閉鎖やブランドの撤退も相次いでいる。またアパレル業界と歩みをともにしてきた百貨店業界も、地方や郊外を中心に店舗閉鎖が続き、「洋服が売れない」事態は深刻さを増している。
なぜ突如、業界は不振に見舞われたのか。経済誌「日経ビジネス」の記者が、アパレル産業を構成するサプライチェーンのすべてをくまなく取材した。
(中略)【登場する企業】
オンワードホールディングス/ワールド/TSIホールディングス/三陽商会/ファーストリテイリング/ストライプインターナショナル/GAP/H&M/三越伊勢丹ホールディングス/大丸松坂屋百貨店/高島屋/そごう・西武 など
amazon紹介文より引用
『誰がアパレルを殺すのか』は、ざっくりと要約すると、以下のような構成になっています。
続きを読むブランド服の買取。高く楽に売るにはメルカリより宅配買取がずっと良かった件
メルカリに消耗してもうたんや…
皆さん、家の中にある服を処分するときってどうしてますか?
恐らく最も多いのは
- メルカリやヤフオクで売る
- コメ兵・KIND・2ndストリートなどのブランド買取店に持ち込む
- 捨てる
のどれかではないかと思います。
私も、以前はメルカリでいらない服を売っていたのですが、あれって色々面倒くさいですよね?マナーの悪いユーザーの相手をすることだったり、梱包発送の手間だったり。送料も含めたら、手間の割に大した金額にならないですし。
そのあたりの手間と金額のことを考えて、最近は宅配買取サービスを使うようにしています。
結論、今のところブランド服を売るならこの手のサービスがベストじゃないかなという風に思っています。
と言うことで、今回は服の宅配買取サービスを初めて使ってみたら、メルカリよりもずっと良かった件について紹介します。
続きを読むアパレルショップ店員が求められるタレント化とSNS活用の話
▼2020年4月追記
コロナウイルスの流行にともなう緊急事態宣言の発令に合わせて、しばらくお休みしていたブログを再開しています。
こちらの記事を書いたのは2年以上前ですが、今やアパレル業界では倒産を間近に控えた会社が激増。生き残ったブランドもリアル店舗は完全に縮小してECシフトの流れが確定的になりました。「販売員を続ける」という選択肢が限りなくゼロになっている現在、この記事に書いている内容も古い情報になってしまったと感じています。
ということで、現在の状況について書いた下記記事も、合わせてご一読ください。
(追記ここまで)
つい先日、こんなニュースがありました。
「セシルマクビー」が人気スタッフによるフリーマガジンを配布開始
ジャパンイマジネーションの「セシルマクビー(CECIL MCBEE)」はCECIL DOLLsによるフリーマガジン「CECIL DOLLs PRESS vol.1」を6月2日から「セシルマクビー」全店舗で配布する。
CECIL DOLLsは各エリアの店舗スタッフから人気メンバーを選抜し、ブランドスタッフの代表としてエンターテイメント業界とのコラボや雑誌・TV出演などを担う11人のユニット。
出典:WWD JAPAN
セシルの客層など考えれば、今回の企画に需要があることは想像に難くありませんが、面白い試みだなあと思ったのでした。
カリスマ店員という言葉が、カリスマ美容師と共に流行語になったのはもう遥か昔ですが、ここ数年のアパレルブランドの戦略として、販売員のタレント化、身近なアイドル化って言うのも一つの流れですね。私の読みとしては、その背景には、インスタをはじめとしたSNSの普及で手軽に自己プロデュース&情報発信ができるようになったって言うのがあるのではないかと思ったりします。
かつては面倒くさい役割代表だった店舗のWEB担当もしくはブログ担当
思い起こせば、私が販売員をやっていた頃も各ブランドが、本社でなく店舗発信でウェブから情報を出していこうぜ、みたいな流れはありましたね。まあ、これは単純に本社のWEB担当やプレスだけで情報発信するよりも、店舗に仕事を振って数で攻めた方が効率的って言うだけの話だったりもするわけですが。
続きを読む売れないアパレル業界で10年以上働いていてリアルに感じる流れ
▼2020年4月追記
コロナウイルスの流行にともなう緊急事態宣言の発令に合わせて、しばらくお休みしていたブログを再開しています。
こちらの記事を書いたのは2年以上前ですが、現実はもっとシビアでした。
今やアパレル業界では倒産を間近に控えた会社が激増。生き残ったブランドもリアル店舗は完全に縮小してECシフトの流れが確定的になりました。「販売員を続ける」という選択肢が限りなくゼロになっている現在、この記事に書いている内容も一部、古い情報になってしまったと感じています(今のアパレル販売員の立場は「辞めるか辞めないか」じゃなくて「少しでも早く辞めて命と生活を守れるか」のフェーズなため)。
ということで、現在の状況について書いた下記記事も、合わせてご一読ください。
(追記ここまで)
店舗閉鎖、倒産危機…落ちていくブランドが続々と
私は10年弱、販売員を続けたのちに、今は広告代理店でアパレル企業と深く関わっているため、アパレル業界に長く身を置いていることになります。
「アパレル業界がヤバイ」と言うのは、私が働き始めたころからずっと言われていることでした。もはや、その言葉を聞きすぎて何も感じなくなってしまってるぐらい、アパレル業界の人間にとっては耳タコな話題です。
ただ、最近は代理店の立場で各ブランドの担当者と話をしても「崖っぷちに近い」「これから2,3年が勝負」と言った言葉を頻繁に耳にします。どこか対岸の火事と思っていた私も、さすがにこれは…と思ったのでした。
お洒落にお金を使う時代では無くなっている
日本に多くのファストファッションブランドが出店を強めたゼロ年代中盤から、日本人のファッションへの感覚が変わったように感じます。H&Mが黒船、なんて言われてましたけどまさにその通りで。
ただ、その頃はファストファッションって「安い割におしゃれ」「ファスト系の洋服はコーディネートの目立たない場所に使う」と言う認識だったのですが、今はそんな時代ですら無くなっています。
ユニクロとGUが、ファミリー層だけでなく全年齢層に勢力を強めて来ていることがその要因かなと思っていて。
実際、最近でもルメール、ジルサンダー、カウズとのコラボとか、GUのイメージ戦略とか、感度の高い層への訴求が本当に上手いんですよね。カウズのTシャツを近所のおばちゃんが着てるとかマジかよって思いますが 笑
一昔前のユニクロのと言えば、「安いけどダサい」「家着にフリースやヒートテックを買うぐらい」など、ファッション用途での使用には耐えられないと言う認識が一般的でした。ユニバレ=自分の着ている服がユニクロとバレてしまう。という言葉があったように、普段着としてユニクロを着ていること=恥ずかしい。と言う感覚でした。
それが、今やメンズ・レディース問わずファッション雑誌の表紙には「ユニクロで賢くお洒落」「プチプラアイテムで1週間着回しコーデ」など、コーディネートの主役はファストファッションになっています。
実は私自身もいわゆるファストファッションブランドとして括られるブランドのうちの一つで勤務していたことがあるのですが、入社した当時よりも退職した数年後の方が、明らかにお店にファッション感度の高いお客様が増えた感がありました。
安く済ませるため、ではなく外出時のお洒落着としてファストファッションブランドを選ぶ。そんな選択肢がファッショニスタの間ですらアリになっていることを肌で感じていたのです。
それは、日本人の中で「おしゃれ」って言うものに対する考え方が変わっていることにも起因するのではないかと思います。いわゆる、ノームコア的な考え方です。
断捨離ブーム、ノームコアブーム…時代はシンプルを求めている
日本が経済的に貧しくなって格差社会が広がっている、などの社会的背景も当然ありながらも、そもそも世界的にファッションの好みがどんどんシンプルな方向に行っているのがデカイです。
ノームコアという言葉が持て囃されたのは2010年代前半ですが、「ファッションで頑張りすぎない」「ライフスタイルの中に溶け込むファッションを」「不要なものは断捨離を」と言う感覚は、今も確実にお客様の中にあります。
実際、私も休日は白T・デニム・ニューバランス・黒縁メガネ・ベースボールキャップって言う、ノームコア・サードウェーブ男子の典型例みたいな格好をしてる時が結構多いです 笑
「シンプルな服装で格好つけすぎないぐらいが丁度いい」って言う感覚は、アパレル業界でずっと働いている私ですら、ここ数年は強く持っているのです。
それでも、裏原系ブームやセレクトショップ全盛の時代を過ごした私としては、<ブランド>と言う価値に対してお金を払うこと、<どこで買うか>を一つのステータスと考える感覚がまだ残っているのですが、恐らく今はその感覚こそダサいものになっているのではないかと感じます。この感覚の違いって、あまり言語化されていないのですが、30代以上のファッション好きならなんとなく分かってもらえるんじゃないかなーと思います。
実際、私も前までよりも服にお金を使わなくなってます。仕事のキャリアアップとともに、経済的にはそれなりに豊かになっているにも関わらず、です。
ただ、安くすりゃブランドが成功するって言うわけでないのも事実 。
最近だと、オールドネイビーの日本撤退のニュースが最たる例でしょう。オールドネイビーの洋服が受け入れられなかった、と言うわけではなく、値引き競争でブランド自体が短期間で一気に消耗していったと言うのが、要因と考えられます。
お客様が安いものを求めている=値引きすれば儲かる。と言うわけではないのが、ビジネスの難しいところで、ここで日本中のブランドが悩んでいます。
勝ち組・負け組の格差が顕著化する流れ
「強いものがさらに強くなり、弱いものは淘汰される。この傾向がさらに進む」。伊藤忠商事の小関秀一代表取締役専務執行役員繊維カンパニープレジデントは、今年の繊維・ファッション業界をこう予測する
これは2017年初頭の業界予測ですが、間違いないです。売れるブランド・売れないブランドがハッキリと別れていく流れは止められません。
これはアパレル業界だけでなくすべての業界の流れですが、ネットで情報を得られるようになる中で、消費者の趣味趣向が画一的ではなくなっています。音楽業界でもテレビ業界でも「みんなが知ってるヒット作」はなくなりました。アパレルも同じことです。
であれば、生き残るのは、圧倒的資本力と数の力で押し切る大手か、ニッチだけどオリジナルな商品・戦略をもって戦えるベンチャー的思考を持った中小になってくるでしょう。ありきたりな言い回しですが、価格だけでない付加価値をどうやって付けて提供するのか?が問われる時代です。
アパレル店舗ではBGMもブランディングの一環。とりあえずのBGMはいらない
アパレル販売員の方は、自分の働いている店舗のBGMって気にしてますか?
お店に行くと各店舗で様々な音楽が流れています。たまにお客様に「この曲ってなんて言う曲ですか?」って聞かれるって言うのは、アパレル販売員のあるあるの一つかもしれません。
※今回の記事ではJASRACが云々と言う話は主題から外れるので一旦、権利関係の話は抜きにして書きます。
アパレル店舗におけるBGMの重要性
居心地のよい空間作りに
オーディオのトラブルなどで店舗が無音になった経験がある人は分かるかもしれませんが、無音だととにかく接客がしづらいです。特に狭い店舗で無音になってしまうと、スタッフの「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」と言う声だけが響くような状況になってしまって、お客様に無用な緊張を強いることになり、明らかにお客様の滞在時間が短くなります。
このように、お客様のために居心地の良い空間作りを行うのがBGMの最も大切な役割です。
続きを読むアパレルから事務職に転職したい女子の必勝ルートを説明します。面接で答えるべき転職理由・自己PR・そして強みとは。
▼2020年4月追記
コロナウイルスの流行にともなう緊急事態宣言の発令に合わせて、しばらくお休みしていたブログを再開しています。
こちらの記事を書いたのは2年以上前ですが、今やアパレル業界は飲食店と同じぐらいのペースで倒産する企業が増え続けています。数ヶ月後には多くの有名ブランドも転換期を迎えることが確実(みなさんの上司は本当のことを教えてくれていますか?今は耐えて5月から巻き返すとか夢みたいなこと言ってませんか?)。
奇跡的に生き残れたブランドも、リアル店舗は完全に縮小してECシフトの流れが確定的になりました。販売員という職業に用意された席が業界全体で激減する中で、「販売員を続ける」という選択肢は限りなくゼロになっています。
この記事に書いている「アパレル以外への転職」という内容がさらに現実味を帯びてきたとともに、一部、古い情報になってしまっている部分もあると感じています。
ということで、現在の状況について書いた下記記事も、合わせてご一読ください。
(追記ここまで)
更新日:20.04.19
アパレルから事務職へ転職したいけれど…
アパレル販売などの接客業からの転職を考える女性にとって、転職先の最有力候補になるのが事務職への転職です。
女性にとっては、土日に休めず体力的にもきついアパレルの仕事をいつまで続けるのか?と言うのは結婚・出産も含めた今後の人生を考える上でも大きな悩みの種と言えます。ましてや、コロナウイルスの影響で接客業自体の安全性に疑問符がつく昨今では、正直「アパレル販売はオワコンかも」と思ってしまうかもしれませんね。というか私は思ってます・
アパレル販売を辞めたいと思っている人は、接客業のハードな仕事に嫌気が差しちゃってる部分もありつつ、でもこれまで自分が頑張ってきた経験も否定したくないっていう二つの気持ちを同時に持ってるんじゃないでしょうか。
なんでそう思うかというと、私も同じだったからです。
私は男性ですが、やはり体力面・給与面の不安から、結婚を機に、アパレルから平日休みのデスクワークに転職しました。また、私の妻もアパレル販売員を新卒から3年ほど続けていましたが、接客業から足を洗って、アパレル事務に転職をしました。
転職活動を始める前は、私も妻も、未経験の事内容を今から身に着けられるのか?そもそも面接を受けても採用されるのか?と言う不安がありました。
しかし、実際に転職活動を開始すると、
・アパレルで得たスキルが事務職でも大きな武器になること。
・未経験の職種に転職するのは難しくないこと。
が分かりました。
続きを読むアパレル新卒面接の志望動機を考えるためのヒントを教えたる
アパレルの新卒面接で必ず聞かれる志望動機
新卒の面接で必ず聞かれるのが志望動機です。アパレル業界においてもこれは例外ではありません。
私は新卒時代に某セレクトショップに入社しましたが、競争率は100倍近くあったそうです。正直、たまたま想定してた質問が来たとかの運もあったのですが、それでも若かりし頃の自分なりに色々考えて面接の受け答えをした結果だったのだと思います。
その後数年間働いてから、他ブランドに転職する際はいくつかのブランドを同時期に受けましたが、すべてのブランドで内定をもらいました。また、転職で入社したブランドでは副店長として、店舗に入社する中途採用のスタッフの面接官も行っていました。
そんな私の経験から、面接での志望動機をどうやって考えるのか?と言うヒントになりそうなアイデア発想方法をいくつかご紹介します。
アパレル以外の業種でも絶対に共通する考え方なので、すべての新卒の皆さんの参考になればと思います。
続きを読むアパレル販売員を一生の仕事にしたい人が確認すべき3つのポイント
▼2020年4月追記
コロナウイルスの流行にともなう緊急事態宣言の発令に合わせて、しばらくお休みしていたブログを再開しています。
こちらの記事を書いたのは2年以上前ですが、今やアパレル業界では倒産を間近に控えた会社が激増。生き残ったブランドもリアル店舗は完全に縮小してECシフトの流れが確定的になりました。「販売員を続ける」という選択肢が限りなくゼロになっている現在、この記事に書いている内容は古い情報になってしまったと感じています。
ということで、現在の状況について書いた下記記事も、合わせてご一読ください。
(追記ここまで)
アパレル販売員は一生続けられない?そんな不安を持つ人のために
アパレル販売員にとっては30歳前後が一つの分岐点です。30代になると体力的な面で無理がきかなくなること、給与面での不安、土日や祝日に休みが取れないことなどが主な原因ですが、かく言う私も30代になってから、上記の理由で土日休みの異業種に転職をしました。
ただ、中には「30代・40代でも接客の道をずっと極めていきたい」「アパレル販売を一生の仕事にしたい」「て言うか体力とか全然余裕」と言うパワフルな販売員も沢山います。中には「店長・副店長なんか頼まれてもやりたくない。とにかくずっと接客をしていたい」と言う生粋のセールスパーソンも。
店長へキャリアアップしたり、ブランド本社のジョブに就く。それは確かにアパレルでは王道の出世ルートです。でも、その道に興味が無い人、販売員を一生の仕事にしてこの道を極めたいと思っている人は、どうやってキャリアアップを図ればいいのでしょうか?
一生販売員をやっていきたい人の考えの一助になるように考えてみました。
続きを読む
VMDの仕事のやりがいや厳しさとは?大手アパレルブランドのVMD経験者が解説!
アパレルショップの仕事でVMDが一番好き!
私はもともと、アパレル販売の仕事を10年ほどしていました。 キャリアとしては、全国展開の某セレクトショップでヒラとして、ファストファッション系のSPAブランドでは店舗付きVMDメインで副店長として勤務しました。
当時を思い出せば、アパレル販売の仕事は多岐にわたりますが、私はダントツでVMDの仕事が好きでした。
ただ、販売員の中には「接客は得意だけどVMDは苦手」といった人も多いです(もちろんその逆もありますが)。特に、昇進や配置換えなどで、ある日急に「じゃあ今度からVMDもやってね」と上司から告げられて、絶望に陥った経験のある人も多いのではないしょうか 笑
今回は、私がVMDをやっていたときのことを思い出しつつ、これからアパレルVMDの道を歩む初心者さんや、スキルアップに悩んでいる経験者の方向けに、ネットでは情報を得にくいVMDの仕事内容について解説できればと思います。
具体的なスキルアップ方法や作例などは他に譲るとして、この仕事のやりがいや厳しさなどを、経験者の立場から説明します。
なお、前述したように私はアパレルのセレクトショップ(たぶん皆さん一回は入店したことがある程度には有名です)、ファスト系ブランド(こちらも同じく)の2ブランドの経験から語ります。つまり、商品数もフロア面積もでかいブランドのVMDであることを前提でご覧ください。
とはいえ、ラグジュアリーブランドであろうと、化粧品屋であろうと、スーパーマーケットであろうと、VMDの基礎は同じなので、もし他分野のVMDをされている方でこのページにたどり着いた方も参考になるんじゃないかと思います。
アパレル販売員なら分かっておきたいVMDとは何か
まずは基本中の基本であるVMDという言葉の意味や定義から入りましょう。
VMDの意味
VMDはVisual Merchandising(ヴィジュアルマーチャンダイジング)の略です。マーチャンダイジングというのは、日本語に直訳すれば「商品計画」となりますが、ここは広義の販売促進だと捉えれば問題ないです。
つまり、VMDとは視覚的な面からの販促を意味します。
店舗においては、ショーウインドウ作成、ディスプレイ作成、什器のソーニング、商品の陳列などを行って、お店の売上をアップしていきます。
もちろん、売上をアップさせるためには、VMD変更を行ったことでどのように数字が変化したのか?を見ながらPDCAを回していく必要があります。
本社VMDと店舗付VMD
VMD職といっても幅広く、ブランド全体のヴィジュアルや打ち出し商品の方向性を決める本社VMDと、本社から落ちてきたVMD指針を店舗で表現する店舗付きVMDに分かれます。
世のアパレル業界人で、人数として圧倒的に多いのは後者の店舗付きVMD。今回は、主にこの店舗付きVMDのお話をしていきます。
店舗付VMD担当とは
所属スタッフ数が10人を越えるぐらいの中規模以上のアパレル店舗では、店舗内の各業務に対して担当制を敷くことが多いです。ストック担当、インポート担当、SNS担当などなど。
そのうちの一つに、VMD担当またはレイアウト担当があります(この二つは基本的に同じ意味で使われることが多いため、当記事では表記をVMD担当で統一します)。
VMDは商品知識・ヴィジュアルセンス・数値管理能力などが必要とされるため、暦の長いスタッフや店長・副店長クラスが行うことがほとんど。新人や中堅がアシスタントとして付くことも多いです。
ちなみにVMDというと、ディスプレイやウインドウの作成など、美的感覚が最も必要な職種と思われがちですが、一般的なアパレルブランドの店舗付きVMDにとっては、売上をあげるためのアクションの立案だったり、数値管理能力が最も求められます。
このあたり、アパレルで働いたことがない人が適当に書いているネット情報では、ちゃんと説明されていないので注意してください。
さらに余談。VMD用語は勝手に覚えます
「VMD」ってググったら出てくるサイトでは、なぜか判を押したように「VP」「PP」「IP」という用語の説明が、やたら丁寧に書かれているのが不思議でしょうがないです。
そりゃ代表的なVMD用語ではありますが、そんなに大切ですかね?ていうか、VP/PP/IPなんて、知らなくても仕事上はまったく困りません。だって使わないから。
普段店舗で働いてて、スタッフ同士で「VPがどうたらこうたら」なんて話さないですよね。「ウインドウ」で通じます。「PPが」じゃなくて「フェイスアウトが」とか「ディスプレイが」でいいですよね。
VMD用語で最低限知っておけばいいのは
- フェイスアウト
- スリーブアウト
- ボディ
- トルソー
- ゴールデンスペース
- 三角構成
ぐらいじゃないですか?他は、やってるうちに勝手に覚えます。
あと、この手の用語はブランドによってローカルな呼び方があるから、覚えても意味がないです 笑
VMDの仕事のやりがい
VMDの魅力にはまった人なら頷いてもらえるであろう、この仕事のやりがいを解説します。
数字に直結。個人のスキルやひらめき次第で接客以上に販売促進を行える
私は完全にここに魅力を感じてVMDの仕事をしていました。
仮にフロアスタッフが5人いる店舗の、1日の売上が100万円だったとします。もしも一人が死ぬほど接客のスキルをあげて頑張ったとして、売上を110万円にすることはできても150万にするのは至難の業です。
でも、VMDがハマれば200万円にすることだってありえます。※もちろん、販売してくれるスタッフがいるからこそ、というのは前提として。
初売りを想像してもらえればわかりやすいですが、VMDは売り上げや客数の規模が大きくなればなるほど、影響力を増します。逆に、スタッフの人数を大きく越えるような来店があったとき、接客の影響力は低下します。
大きな売り上げを動かしたい、という気持ちを持っている人にとっては、VMD担当になることが近道といえます。
ディスプレイやウインドウなどを作るクリエイターとしての喜び
VMDといえば最初に浮かぶのが、ショーウインドウやディスプレイの作成です。
店頭接客とは全く違う、クリエイターとしての資質が問われる分野であり、時にはミリ単位の調整で完成度を上げていく、非常に細かい作業でもあります。
本社から落ちてくるサンプルを再現するだけなら、時間さえかければ誰でもできますが、その場にある商品やプロップを使って、アドリブで何かを作る作業は完全に創作です。ボディのコーディネートを考えるのだってそうです。
また、クリエイティビティが必要なのは、それらVP/PPだけではありません。
例えば什器のアイテム陳列も創作の一環です。
ちなみに、私はよく友人などから「VMDやってたから手先が器用なんでしょ?」と言われますが、めちゃくちゃ不器用です 笑
ここは経験者なら頷いていただけるかと思いますが、VMDは全般的に手先の器用さよりも空間把握能力の方が大切かなと思っています。「この配置は違和感がある」「ここの距離感が不自然」など、どこがどう間違っているのかを感じ取れないと、いくら手先が器用でも意味がありません。カラーセンスも同じくです。
VMDには絶対的な正解はなく、強いて言えば売り上げが取れるものが正解ではありますが「大多数の人が気持ちいいと感じる間の取り方」みたいなものは確かに存在するので、そこが理解できるかできないかが、大切じゃないかと思っています。
アパレルVMDの仕事の難しさ・辛いところ
ここからは逆に、VMDの辛いところについて。
楽しいばかりじゃないのはどの仕事でも同じですが、VMD特有の厳しさとはどんなところでしょうか?
売るVMDと魅せるVMDのバランス感覚が必要
上でクリエイター云々と書くことと相反してしまうのですが、VMD担当は芸術家ではありません。店舗やブランドの売り上げをあげるためのセールスパーソンです。あくまで目的は売り上げをあげることです。
もしかしたら、ラグジュアリーブランドやコレクションブランドの本社VMDなどであれば、アーティスト的な役割が期待されるかもしれませんが、大多数のブランドの店舗付きVMDはそうではありません。
VMDをやっていると「こうした方が売れる」という気持ちと「こうした方が格好いい(ブランディングを高められる)」という気持ちのせめぎ合いが必ず起こります。
これを経験したことがないVMDパーソンはいないはずです。
例えば、こんな経験はありませんか?
- シーズンコンセプトとずれたアイテムが売れているので、世界観を崩してでもエントランスで打ち出す必要がある。
- ボディに強化アイテムを着せるために、ボディのコーディネートを妥協しないといけない。
- セール期はディスプレイをすぐに崩されるので、棚上がスカスカになるけど何も置けない。
こういった「魅せる」と「売る」のバランスをいかに保つか?という点が、非常に難しいと感じるでしょう。多くの場合は店長や本社VMDなどの判断を仰ぐことになりますが、自分で判断しなければいけない場面も多々あります。
VMDの仕事にはクオリティとスピードのバランス感覚が必要
上の件とも関係しますが、レイアウト変更は限られた時間の中で行う必要があるため、スピードが命です。
しかし、当然ながら同時にクオリティが求められます。
アイデアを瞬時に考えつく発想力と、VMD変更を時間内に終わらせるスピード感がの両方を身につけるためには、やはり経験が必要です。
「どうしようかな」と考える時間を極力減らして、考えながら手を動かさないといけません。
アシスタントがつくようになると、それに加えて「手を動かしながら指示を出す」という動きも必要になります。
本社VMDへのキャリアップが難しい
店舗付きでやっているスタッフは、キャリアパスが「店長や副店長か、本社VMDか」という二択になります。
ただ、店長・副店長はお店全体のマネジメントが必要なため、VMDのことばかりをやれるわけではありません。私もこの点で悩みました。
本社VMDの場合は、どのブランドもキャリアパスが狭く、限られた人員しかそのポジションには就けません。やはりVMDを志す者であれば、ブランドの世界観を作り出せる本社VMDは憧れのポジションですが、そこに至る道の険しさに苦労する人が多いです。
今のブランドでの昇進が難しい場合は、本社のVMDアシスタントとして他ブランドに転職して本社スタッフに潜り込んでしまう 笑 という方法が最も現実的です。このあたりは、過去にVMDの求人の探し方についての記事でかなり詳しく解説したので、興味のある方はご覧ください。
VMDの仕事は開店前・閉店後の作業がメインなので残業しがち
店内のレイアウト変更が発生するVMD業務は、お客様の邪魔にならないようにお店の営業中には行えません(閑散期などであれば営業中に行うこともありますが、あまりよろしくはないですね)。
開店前の作業はオープン時間との戦い、閉店後の作業は終電との戦いが待っています 笑
先ほどの、クオリティとスピードのお話にも関係しますが、自分の残業を減らすためにも、スキルをつけないといけません。
大型SPAは深夜勤務でVMDチェンジすることも
SPAブランドなど、店舗の規模が大きいブランドでは、商品量が桁違いのため、深夜シフトが組まれることもあります。
深夜の作業は、それはそれで変なテンションになって楽しい面もありますが 笑 眠気と戦いながらのきつい作業です。私はSPAで働いているときは週に1回は深夜シフトが入っていたのですが、生活リズムが崩れっぱなしでした。
甘くはないけど販売とは全く違う楽しみがあるVMD担当の仕事
VMDの仕事は、接客販売とはまったく違うスキルが必要な職務です。
厳しい面もありながら、ハマればその魅力にズブズブとはまってしまう仕事でもあります。
これからVMDを担当する人や、すでに経験をしている人など様々かと思いますが、ぜひVMD道を極めるべく邁進していただければ。