雨が多い街だね-アパレル販売員からの転職者が書くブログ-

元アパレル販売員で今は転職してアパレル業界の中の人をやっている著者がファッションと関係することや関係しないことを書くブログです。

アパレル販売員のサービス残業が発生するまで。なぜ残業が多くなるのかを考えた

▼2020年4月追記

コロナウイルスの流行にともなう緊急事態宣言の発令に合わせて、しばらくお休みしていたブログを再開しています。

こちらの記事を書いたのは2年以上前ですが、現実はもっとシビアでした。

今やアパレル業界では倒産を間近に控えた会社が激増。生き残ったブランドもリアル店舗は完全に縮小してECシフトの流れが確定的になりました。「販売員を続ける」という選択肢が限りなくゼロになっている現在、この記事に書いている内容も一部、古い情報になってしまったと感じています(今のアパレル販売員の立場は「辞めるか辞めないか」じゃなくて「少しでも早く辞めて命と生活を守れるか」のフェーズなため)。

ということで、現在の状況について書いた下記記事も、合わせてご一読ください。

 

【必読】緊急事態宣言の発令に寄せて

 (追記ここまで)

アパレル店舗で横行しているサービス残業

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アパレル販売員の仕事とは切っても切り離せないのがサービス残業です。

私は大手セレクトショップとファストファッション系のSPAブランドで合計10年ほどアパレル販売員をやっていましたが、そのどちらにもサービス残業は存在しました。セレクトショップ時代は最も多い時期で月に50時間ほど。ファスト系のブランドだと月80時間を越えるサービス残業を経験したことがあります。

 どの企業もコンプライアンスが厳しくなっているこのご時世でも、アパレル業界の悪習としてサービス残業・無賃労働がはびこっているのは紛れもない事実です。

 

アパレル販売員のサービス残業はなぜ発生するのか?

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あくまで私の体験談に基づいたお話です。

サービス残業が発生する時って、上司や本社からサビ残自体を強要されることはほぼありませんでした。なぜって、サービス残業を命令してしまうと問題になるから。向こうからしたら、こちらが出るところに出れば100%負けちゃうわけです。

なので、あくまで「命令はされていないけれど自主的に残りたいから残りました」と部下が言わざるを得ない環境を作るわけです。さらに言えば、意識的にそう仕向けるタイプもいますが、私の体感だと<本人は悪気がないけど結果的にそう仕向けるのと同じことになってる>って言うタイプの上司が多い印象です。

では、具体的にどんな流れでサービス残業が発生するのかをご説明します。

 

サービス残業が発生するパターンの具体例

私の場合は、以下の流れでサービス残業をすることが多かったです。 

  • 上司が「あれが出来てない」「これが出来てない」と言う指摘をする(でも具体的に「ああしろ」「こうしろ」とは言わない)。
  • 実際にはかなりの作業量があるタスクだけど「出来ません」と言うと怒られるので「分かりました。やっておきます」と笑顔で回答。心では鬼の形相です。
  • 閉店後にタイムカードを切ってから、店に残って作業をする。ちなみにタイムカードを切ったことは上司には黙っておかないといけません。詳しくは後述。 

私の場合は、店舗VMDやストック業務がメインだったので、閉店後でないとできない作業がほとんどでしたが、接客メインのスタッフであっても同じようなことは起こります。

接客用の店舗共有資料の作成、入荷商品のサイズ感を知るための試着、SNSやブログの更新などなど、販売員の仕事は接客以外にも多種多様です。 

 

「生産性を上げて残業を減らせ」は最終的に精神論に陥る

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先ほど、「タイムカードを切ったことは上司に黙っておかないといけない」と書きました。

これがどう言うことかというと、まず前提として上司としては部下に残業されては困るわけです。 店長会とかで、残業時間の多い店舗の店長は祀り上げられてしまうので。「店の残業を減らす」というのは、店長のミッションなわけです。

なので、店舗のスタッフが残業をしていると、なんとかその残業を減らそうとするのですが、かと言って、先ほど書いたようにサービス残業を強要してしまうと、それはそれで問題になる。

そこで出てくるのが「生産性」と言うマジックワードです。

 

生産性が上がれば残業はゼロになる……のか?

「仕事の生産性を上げろ」「スケジューリングを事前にしろ」「効率的に動いて無駄な動きを減らせ」と言うのは、アパレル業界に限らず、世の中の会社員がみんな言われる言葉です。つまり、仕事を終わらせるために残業が発生するのは、お前の仕事のやり方が悪いんだ、と言う論理ですね。

これは、ある意味では正しい意見です。仕事の進め方がとにかく非効率な人と言うのは存在しますし、事前にスケジューリングをきっちりすることで無駄なく動くことができるシチュエーションも存在します。仕事のやり方を変えることで、残業時間が削減することも多々あるでしょう。

ただ、正論だからこそこの言葉はやっかいです。

ものには限度ってものがあるので、なんでもかんでも「生産性を上げろ」だけで済ませられるわけもないのですよね。一気に100品番ぐらい入って来た入荷商品の検品と袋ムキとしまい込みを一人で3時間で終わらせろと言われても無理なものは無理です。店に一台しかないパソコンを営業中は店長が独占しているのに、それを使って資料を作るのも不可能です。

「生産性を上げる」はとても便利な言葉ですが、当然ながら限界はあります。結果的に、最後は論理性を欠いた、ただの精神論になってしまいがちです。

 

そしてアパレル販売員のサービス残業が人知れず生まれる

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残業すれば「生産性を上げろ」とドヤされる。でも与えられた仕事は残業しないと物理的に不可能。じゃあどうするか?となると二択しかありません。「仕事をやらない」か「バレないようにサービス残業する」。

つまり「営業中は接客に集中しろ。でも、それ以外の仕事もやれ。でも残業はするな」と言う上司のリクエストを満たそうとした結果、サービス残業が発生するのです。

中には、その状況が分かっていて黙認するタイプもいますし、店長が早番シフトの場合は、店長が退勤してからやるなんてことも。私の所属していたある店舗では、サービス残業が常態化しているけど、店長だけがそのことに本気で気づいていない。と言うパターンもいくつかありました。なんというか、とてもとてもおかしな状態だったわけです。

残業代が出ないのでヒラと給料が変わらないアパレル店長・副店長も

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ここまではアパレル店長disのような内容を書いてきましたが、店長は店長で劣悪な環境で労働している場合も多いです。

私は最高職位が副店長でしたが、そのブランドでは店長以上の職位の人間は管理職扱いになるので、残業代はそもそもありませんでした。

 

労働基準法32条によれば、1日8時間、1週40時間を超えて労働することは原則として禁止されています。しかし、管理監督者に該当する場合には、この労働時間の規制を受けなくなります。簡単に言えば、何時間働いても時間外労働として扱われないということです。

引用:弁護士法人ベリーベスト事務所

 

中小のアパレルブランドなどでありがちなのは、一時マクドナルドなどで事件になった、いわゆる名ばかり管理職です。

 

名ばかり管理職

十分な職務権限を持たないにもかかわらず、肩書きだけを与えられて管理職とみなされ、残業代が支払われない従業員のこと。「偽装管理職」とも呼ばれています。

 引用:コトバンク

 

規模の大きいブランドでは、従業員数も多いため社内競争も激しく、店長に上り詰めるためには、相応のスキルや経験が必要なことがほとんどです。しかし、小さめのブランドの場合は、比較的早い段階で店長まで昇進可能なため、結果的に仕事内容は自分の実力に見合わないために難易度は増して、しかも残業代が無くなったことで給料はむしろ減ってしまう。なんて言うことも。

場合によっては、店長がヒラよりも稼いでいないと言う逆転現象まで発生してしまいます。

 

サービス残業問題は最終的にはアパレル企業の体質に依存する

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店長からの圧力によって、サービス残業をせざるを得ないアパレル販売員。昇進したのに給料が上がらない店長。

じゃあ、結局一番悪いのは誰なのか?となると、最終的にはその企業の体質。と言う話になってくるわけです。アパレルブランドのすべてで過度な残業やサービス残業が存在するわけではなく、労働環境が整えられたブランドもある、と言うことを考えれば、もうその企業体質でしかないわけで。

アパレルが超不況な中で、儲からないから経費削減の一環として人件費を抑えたい、と言う企業の思惑も垣間見える中で、それでも労働者を守ろうとする姿勢があるのか、ないのか。

どこも人手不足になっていて、働くブランドを販売員側が選べる今の時代だからこそ、「自分はどこで働くべきなのか?」を深く考えることが大切です。体や精神を壊してからではもう遅いので、サービス残業が常態化しているブランドに我慢ができない人は、早く見切りをつけましょうね。かつての自分もそうだったので。

それではこんなところで。 

 

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