雨が多い街だね-アパレル販売員からの転職者が書くブログ-

元アパレル販売員で今は転職してアパレル業界の中の人をやっている著者がファッションと関係することや関係しないことを書くブログです。

普段ラノベしか読まない人向け おすすめの読みやすい純文学小説まとめ(冒頭試し読みリンク付き)

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当サイトの過去記事【アメトーーク!読書芸人】『教団X』のamazonレビューがヒドいことになっている件 が、いつの間にかGoogleの検索ワード「教団X」で上位に来ていたらしく、毎日、結構な数のアクセスがあります。すわ、これはアニオタ臭いエントリーを控えて、小説関連のブログへ方向転換か、と思っている次第。まあしないけど。

と言うことで小説関連のエントリーとして、初心者でも読みやすい純文学作品。とりわけ、ラノベ読者と親和性のある作品をまとめました。

 

近年、ライト文芸(キャラ文芸、大人向けラノベ)レーベルの新設が続くなど、かつてないほどライトノベルと純文学は接近しつつあります。この流れは個人的には大歓迎。日本で小説が一般的な娯楽として普及しない大きな要因の一つに、日本の文壇文化みたいなものがあると思っていて、作り手や既存ファンがジャンルに固執するあまり、新規ファンが入り込みづらくなってるのでは、と。そのあたりが今の流れでボーダーレスになってくれればよいのですが。

閑話休題。

このエントリーでは全5作品を紹介します。紹介したい作品はもっと沢山あるのですが、まずはここからどうですかって言う自分の中の代表作的なものを選びました。

出版社のサイトなどに冒頭の試し読みページがあるものはリンクを掲載していますので、ご参考に。

砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない - 桜庭一樹

すんません。いきなり記事タイトルに偽りありです。と言うのも、この作品はそもそもがラノベレーベルから発売され、その文学性の高さと反響の大きさを受けて一般文芸レーベルから再販された小説です。つまり「ラノベ寄りの純文学」ではなく「純文学寄りのラノベです」。ただ、ラノベと純文学の境界線について語る時には絶対に外しちゃいけないエポックな作品なので入れちゃいました。

虚無的に生きる主人公と不思議ちゃん転校生の、ヒロイン二人の交流を描きつつ、救いようのないラストに向けて物語が淡々と進んでいくサスペンス的要素の強い作品。扱っている題材は重めですが説教臭くはならず、割とあっさり読み切れる文章の軽さも、作者の上手さでしょうか。グロテスクな表現すら美しい、桜庭一樹の本領発揮な、ラノベ・純文学の両ジャンルにおいて2000年代を代表する一冊と言えそうです。

 

阿修羅ガール - 舞城王太郎

減るもんじゃねーだろとか言われたのでとりあえずやってみたらちゃんと減った。私の自尊心。返せ。

これが小説の出だしですよ。この時点で絶対に面白いの決定でしょ。

ラノベと純文学のクロスオーバーと言えばこの人、な舞城王太郎です。初版が2003年なので、今の時代だと少し古くなってるかもと思って、今回紹介するにあたって改めて読み返しましたが、全然そんなことは無かった。むしろ彼のフォロワーが今だに出てこないところが、もはや模倣することすらできないオリジナリティを持っていることの証左になっていて、改めてこの人が日本の文学に残した爪痕の大きさを実感しました。

頭スカスカのギャルである主人公・アイコが好きでもないキモ男と一発ヤってしまったところからストーリーは始まり、終わりまでノンストップの超スピードで進みます。失踪事件と、連続殺人犯の暗躍と、巨大匿名掲示板を起点に巻き起こる中学生狩りの三つの事柄が同時に巻き起こるカオス状態の街を舞台に、やがてストーリーはミステリーの仮面を脱ぎ捨てて、現実と虚構の狭間のディープな世界に迷い込む。

ギャルの一人語りを笑いながら読んでいたはずが、次々と変容していく作品内世界に振り回されるうちに、いつの間にかとんでもない地点に着地している。読んだあとの打ちのめされ感がたまらない作品です。

 

■冒頭試し読み

http://www.shinchosha.co.jp/books/html/118631.html

 

出だしと言えば作者の代表作である『好き好き大好き超愛してる。 』の出だしも有名で、こっちもオススメ。お話的にも阿修羅ガールで描いた混沌とした世界観の更に深淵まで入ったようでありながら、退廃的な美しさも兼ね備えた芥川賞候補も納得の作品です。

愛は祈りだ。僕は祈る。僕の好きな人たちに皆そろって幸せになってほしい。それぞれの願いを叶えてほしい。温かい場所で、あるいは涼しい場所で、とにかく心地よい場所で、それぞれの好きな人たちに囲まれて楽しく暮らしてほしい。最大の幸福が空から皆に降り注ぐといい。僕は世界中の全ての人たちが好きだ。

 

 

鳥類学者のファンタジア - 奥泉光

友人に勧めるために何冊も買い直した一冊であり、絶対に「面白かった!」と熱っぽい反響が返ってくる作品。すでにベテランの域に達しながら、重厚な本格文芸、ミステリー、SF、ライト文芸と幅広く活躍する芥川賞作家である作者の代表作の一つ。

アラフォーの独身ジャズピアニストである"フォギー"こと池永希梨子が、ライブ中に見掛けた謎の女性との邂逅を経て、作品の舞台や時間を跳躍しながら繰り広げる大冒険SF活劇はやがて宇宙の真理にまで辿り着く壮大な展開に。と言うと小難しい話のように聞こえるけれど、そんなことは全くなしで読み易い作品です。登場人物のキャラ立ちが非常に激しく、そのどれもが愛すべき個性に溢れているのが入りやすさのポイントでは。

確かな文章力、SFとしてのクオリティの高さ、作者の音楽への造詣の深さが作品の根幹を支えながら、沢山のキャラがドタバタと動き回る様は、大人向けラノベが活況を呈する今の時代にこそすんなり読まれるのでは?個人的には、無人島に一冊だけ持っていけるならコレ。と言うぐらい何度も読み返した思い入れのある作品。

 

 

東京奇譚集 - 村上春樹

 ラノベ的かと言われれば違う気もしなくもないが、でもこの人は入れておかないといけないだろうと言うことで村上春樹です。作者の作品の中ではあまり目立たない作品。「ノルウェイの森」とか「1Q84」は本記事の趣旨に合わないので除外しました。

作者自身が知人から聞いた、ウソのような本当の話を小説の体裁で文章化した短編集で、確かにこれがすべて本当だったら興味深すぎな話の連発。普通だったらあり得ないけど、こんな不思議な体験をする人も実はいるのかも?と思える絶妙なリアリティラインを持った短編集です。実は冒頭に記される作者の前書きが一番好きだったりするので、下記試し読みページで確認を。これを読んで面白そうと思えたら、きっと本編も楽しめます。

 

■冒頭試し読み

http://www.shinchosha.co.jp/wadainohon/353418/tachiyomi.html

 

 

夜は短し歩けよ乙女 - 森見登美彦

『四畳半神話体系』『有頂天家族』の二作品がアニメ化されている作者の代表作。滑稽なキャラが不条理な世界で繰り広げる、森見ワールド全開の作品。愛すべきストーカーである「先輩」とヒロイン「黒髪の乙女」の恋(と言うか一方的な片思い)が暴走していくうちに、常軌を逸した人物たちと出会い、常軌を逸した事件に巻き込まれていく不条理ファンタジー。

古典文学の文体を踏襲した文章が作者独特のユーモアに繋がっていて、今回紹介する中では最も「ラノベ的」軽さを持った作品ではないかと。

 

■冒頭試し読み

:: 立ち読み || 夜は短し歩けよ乙女 || 角川書店 ::

 

 

こちらからは以上です。