ショップ店員がお客様に「話しかけられたくない」「うざい」と思わせてしまうのは問題だと思う件
ショップ店員は声を掛けてもうざがられる仕事?
こんにちは。
当ブログでは、いつもショップ店員向けの情報を中心に掲載しているのですが、今回はお客様側の立場にたった視点でお話ができればと思います。
私は10年ほどアパレルのショップ店員の仕事をしていました。
某セレクトショップの店員、某SPAブランドの店員を経験し、最終キャリアは副店長でしたが、両ブランドともにお客様に積極的に話しかけていく、接客に力を入れたタイプのブランドでした。
ショップ店員の仕事というのは、接客がメインの業務であることは当然なのですが、友人などからはよく「知らない人によくあんなに話しかけられるね」「お客さんから無視されたりうざがられたりしないの?」と聞かれますが、実際に無視されまくるし、うざがられまくります。
特に接客慣れしていない新人のうちは、お客様との距離感がつかめずに、ただただ突っ込んでいっては嫌がられるということの繰り返しだったりします。
私も、自分がお客さんとして買い物にいくときは、あまり話しかけられたくないと思う人間なので、接客されそうになるとやんわりと断るのですが、それでもガンガンくる店員には「空気を読んでくれ!」と心の中で思ったりします。
ただ、接客することの全部が全部悪いってわけではないとも思います。
店員とお話するために来店してくれる顧客様がいることも事実
ショップ店員を続けていると、顧客様・お得意様が徐々にできるようになります。来店した際に〇〇さんは出勤してますか?と聞いてくれたり、中には遠方からわざわざ会いに来てくださる方も。
顧客様ができるというのは、ショップ店員の仕事の中でもトップクラスのやりがいを感じる瞬間なのとですが、これはノー接客のブランドだとあり得ないことです。
店員に話しかけられたくないと思う人にとっては信じられないことかもですが、世の中には「店に行ったのに話しかけてくれなかった」という不満を持つ方もそれなりにいて、一概に「ショップ店員が話しかける=悪」とも言えません。
どのお客様に話しかけても会話がはずむ店員もいる
もう一つ例をあげます。
どんなブランドにもスーパー販売員と呼ばれるような接客のスペシャリストがいます。その人たちは、接客スキルを武器にブランド内でキャリアアップをした猛者だったりします。
で、やっぱり接客がうまい人は、どんなお客様に対しても、すっと懐に入るのがうまいんですよね。物理的な間合いの取り方、声のトーン、言葉選び、表情づくり、服装などなど、様々な点でお客様に対して警戒心を抱かせない空気を作り出します。
前に来店したときに自分が話しかけたらフル無視だったのに、後日その人が同じお客様を接客すると話しがはずんで顧客様になった。なんていうのは、よくある話です。
となると、やっぱり話しかけることがすべて悪とも言えず、むしろ、接客スキルが低いショップ店員ばかりなことが問題じゃないかとなるわけです。
話しかけられたくないお客様には「話しかけないことが接客」
本来、ショップ店員というのは、お客様が心の中で思っていることに共感し、先回りして疑問や問題を解決する存在であるべきです。
お客様が店内の商品を見て、何か疑問を抱いている(例:どんな合わせ方がいいかな? 着心地はどうなのかな? これって家で洗濯できるのかな?などなど )のであれば、それに対して適切なお声がけをするべきですが、そもそも「ショップ店員には何があっても声を掛けられたくない」と思っているお客様に対して声を掛けるのは、間違っているわけです。
話しかけないことが最高の接客になることだって往々にしてあります。
問題は、それを感じ取れないショップ店員が多いこと。
有名な話ですが、アパレルの世界には個人売りといってノルマに近い数字目標が個々に設定されていることが多く、その評価を得るために、お客様に話しかけてきていることも、また事実です。
アパレル企業も営利目的があって経営している以上、個人売りを設定しないとスタッフのモチベーションが上がらないってのもありますが、でもこれらは全部お客様には無関係なことであることは間違いありません。
こんなことをいうと、同業者からは「きれいごとを言っているだけだ」と言われそうですが、嫌がるお客様を追いかけまわすことが売上に繋がるわけはありません。とにかく、空気が読めるか否かなんです。
接客がうまい販売員は引き際も美しい
一人一人のお客様が、ショップ店員に話しかけられることに対してどんな感覚を抱いているのかは、最初に一声かけてみないと分かりません(中には、見た目や歩き方などからその空気を察することができるお客様もいますが、稀です)。
だから、最初の一言目は勘弁して、とは思いますが、接客がうまい販売員は、一言目で「接客されたくないお客様だ」と感じれば、無理にゴリゴリと接客してくることはありません。引き際も美しいのがスーパー販売員です。
ショップ店員の「よろしければ」問題
服屋さんで商品を見ていると、ショップ店員から「よろしければご試着もできますので」と話し掛けられた経験がない人は少ないかと思います。
「別に今はまだ試着したいなんて思ってもないし、本当に試着したければ自分から声を掛けるのに」と思う方も多いでしょう。
その感覚は100%正しいです。
ショップ店員にとっては、業界用語でファーストアプローチと呼ばれる最初のお声がけは、お客様と適切な距離感を築くためにとても大切なことなのですが、なぜかそこで「よろしければご試着もできますので」と話しかける店員が多く、これは接客スキルの低い販売員の常套句です。本当に接客がうまいショップ店員はこの入りはしません。
派生として「よろしければ鏡の前であててみてくださいね」「よろしければ広げてご覧ください」などがありますが、このよろしければ問題はアパレル業界全体に蔓延しています。適切な一言目が思いつかないがために、口癖的に言っている店員がほとんどです。
ショップ店員に「接客しないで」をうまく伝える断り方は「何かあればこちらから声をかけます(笑顔)」
最後に、店員に話しかけられたくないときのうまい断り方について。
鉄板はイヤホンをして入店すること。さすがに、イヤホンをわざわざ外させてまで話しかけてくる店員は少ないです。
そうでない場合は、店員さんに対して「何かあったらこっちから呼びますね」と伝えるのが一番、自然かつ気まずくなりません。
ただ、本来は接客をして喜んでいただけるのが、やはり私たちからしたら最もうれしいことです。うざい接客をする店員はあしらってもらって問題ないのですが、世の中には本当に素晴らしい接客を誰に対してもできる店員も存在します。
皆さんにそんなショップ店員との出会いがあることを願います。
では本日はこのあたりで。