アパレル転職相談室:「本社VMDへの昇進が難しい&求人が無い」
▼2020年4月追記
コロナウイルスの流行にともなう緊急事態宣言の発令に合わせて、しばらくお休みしていたブログを再開しています。
こちらの記事を書いたのは2年以上前ですが、現実はもっとシビアでした。
今やアパレル業界では倒産を間近に控えた会社が激増。生き残ったブランドもリアル店舗は完全に縮小してECシフトの流れが確定的になりました。「販売員を続ける」という選択肢が限りなくゼロになっている現在、この記事に書いている内容も一部、古い情報になってしまったと感じています(今のアパレル販売員の立場は「辞めるか辞めないか」じゃなくて「少しでも早く辞めて命と生活を守れるか」のフェーズなため)。
ということで、現在の状況について書いた下記記事も、合わせてご一読ください。
(追記ここまで)
店舗でVMD担当の女性からの転職・求人探しに関するご相談
当ブログでは、アパレル勤務の方からのお悩み相談を受け付けています。
今回は、店舗でVMD担当をされている方の、キャリアアップや求人の探し方についてのご相談にお答えします。
※事前に相談者様へ公開の可否を確認の上、個人の特定に繋がらないないように、少し改変した文章にしていますが、質問の主旨は変わりません。
はじめまして。いつもブログを見させていただいてます。
私はアパレルで働き始めて5年目になります。
都内のセレクトショップでレディースフロアに立っていますが、販売と並行して店舗のVMD担当をしています。
お店のVMDをしているうちに、接客よりもVMDを極めていきたいという気持ちが強くなっており、副店長や店長を目指すことは考えていません。
お店ではVP・IP(※筆者注釈:VP=ディスプレイやウインドウなどのイメージ作りに関係する箇所、IP=アイテムの陳列などの売上に直接関係する箇所)の両方を管理しており、什器のゾーニングなども行っています。
(中略)
上司にも本社のVMDを目指したいという意思は伝えていますが、私の働いているブランドでは、過去に副店長以上のポジションを経験せずに本社VMDに昇格した例がなく、「まずは副店長を目指したら?」と言われています。
年齢もそろそろ30が近くなり、もしも副店長になってからVMDのポジションに就いたとしても、遅いのではないかと焦っています。
私はこのまま今のブランドで、副店長を経験してから本社を目指した方がいいのでしょうか?それとも、他ブランドに転職すれば、今の私のキャリアでも本社VMDになれるのでしょうか?
また、VMDの求人は、求人サイトでもなかなか見つけられません。VMDの転職をする人はどこで求人を見つけるのでしょうか?
という、VMDの専門職を目指したい女性からのお悩みでした。
今回、この相談者様のお悩みを取り上げさせていただいたのは、私が個人的にVMD職に思い入れがあるからです。私は某ファストファッションブランドでずっと店舗付きVMDをやっており、そのときの実績が買われて旗艦店の副店長になったという経緯があります。
キャリアのスタートはほとんどの方と同じで、接客+ストックだったのですが、先輩が日々入荷する商品に合わせて、店内の陳列やディスプレイを即興で作っている姿がとても格好よくて、憧れからVMDのアシスタントになりました。
最初は憧れで始めたVMDの役割ですが、やっていくうちにどんどんのめりこんでいきましたね。
ディスプレイや什器のゾーニングなど、VMDの「V」の仕事も好きでしたが、どちらかといえば販売の動向に合わせて陳列で売上を動かしていく「MD」の方に魅力を感じるようになりました。接客販売では、自分一人で動かせる売上に限界があるけれど、VMDは店舗全体の売上を大きく変えられるのが醍醐味でした。
特に、キャリアの後半は売上規模がバカでかいファストファッションブランドの旗艦店のVMDをやっていたので、自分の采配一つで数百万規模の売上を変えることができて、ただただ楽しかったです。体力的にはキツかったですが 笑
ただ、その後、本社VMDを目指す過程で、結婚後の生活などを考えて、結局は異業種に転職をしてしまったので、実際に本社VMDは経験していないという点をご了承いただいた上で、VMDのキャリアパスと求人の探し方についてアドバイス申し上げます。
店長or副店長を経験しないと本社VMDになれないブランドとそうでないブランドがある
他ブランドに転職すれば、今の私のキャリアでも本社VMDになれるのでしょうか?
まず、今回の本題のこちらのご質問に関しては、上の見出しのとおり、ブランドによってVMDのキャリアパスについての考え方はそれぞれです。
私がこれまで経験した2ブランド(セレクト、ファスト)だと、某セレクトショップの方は二年目のヒラで本社VMDやプレスに抜擢されたスタッフがいたぐらいなので、マネジメント経験の有無は関係なく本社行きのルートが開かれていました。
また、そのブランドの本社VMDの中途採用求人の応募条件には「店舗付き可」という文言が入っていたように記憶しています(少し情報が古いので、今もそうかは分かりませんが)。
このように、現在のスキルや経験よりもポテンシャル・やる気重視で本社スタッフを拡充していくパターンのブランドも多数存在します。
逆に、私が働いていたファストファッション系ブランドの場合は、副店長以上を経験していることが本社昇進の必須条件でした。しかも、旗艦店の副店長以上というさらに厳しい条件付きです。
私の場合は、旗艦店の副店長だったのでこの条件は満たしていたのですが、実際になれるかどうかは別問題。本社VMDの枠は少なく、非常に狭い道でした。
また、内部昇格よりも中途採用の求人募集で本社スタッフを拡充していくことが多いブランドだったので、空きが生まれても、結局は競合ブランドから来たおっさんがポジションを奪っていくっていう感じで、私は本社VMDへの道を諦めて、転職してしまいました。
それでは、相談者様はよくお分かりかと思いますが、店舗付きVMDから本社VMDになると、ワークスタイルがどう変わるのか?という点を確認しておきましょう。
店舗付きVMDから本社VMDになるメリット
VMDの仕事はオフィス勤務中心&転勤なし
販売の仕事をしていると、店舗の異動が頻繁に起こります。給与面の問題もあり、販売員はなかなか持ち家を持てないのですが、本社勤務になれば定住が可能になります。
本社VMDは店舗巡回などの出張はありますが、一年のほとんどを本社オフィスで仕事をします(ただし、かなり大きい規模のブランドだと本社機能を全国の地方オフィスに分けている場合もあります。その場合は本社VMDであっても、地区をまたいだ転勤がある場合もあります)。
また、転勤の心配がないため、家庭を持ちやすくなると言うメリットもあります。アパレルは結婚がしにくい職業なので、本社VMDになると縁談も進むかもしれませんね 笑
給料が大幅にアップ!VMDアシスタントであっても販売員を上回る場合も
給料・年収の低さもアパレル販売員の悩みどころですよね。
ブランドにもよりますが、本社スタッフの職務グレードは、店長と同等かその一つ上に設定されている場合が多いです。
そのため、全国展開の大規模ブランドであれば、年収400万円台中盤~500万円台あたりが本社VMDの平均的な年収となります。
アシスタントであれば300万円台後半~もありえますが、それでもヒラの販売員よりは大きく年収アップできるという人が多いのではないでしょうか。
アパレル販売員の給料はブランドによってピンキリありますが、少し不思議なのが「会社の規模と給料が比例しない」ということです。
知名度も高く、全国に何十店舗も展開しているような<売れてるブランド>であっても、働いている店舗スタッフの給料は、月給20万円・ボーナス無しで年収240万円とかっていうのが、普通にあり得ますよね。
本社スタッフの場合は、一般企業と福利厚生も変わらず、ある程度ブランド規模に比例して給料も高くなる傾向にあります。
店舗勤務のような過酷な残業は無し。職場環境は一般企業で働くのと同じ
もう一つ、販売員の悩みの種が立ち仕事+残業時間の多さによる、体力的な負担です
特に店舗付きVMDをやっているスタッフは、日中は接客をして、閉店後に長時間残業でディスプレイ作成やレイアウト変更を行っている場合がほとんどです。
ショップのVMD担当は、店舗内で最も残業が多い役割であることに異論を唱える人はいないでしょう。
ちなみに、私が所属していたファストファッション系のSPAブランドでは、商品の入れ替えサイクルが非常にスピーディーで、大幅なVMDチェンジが週1ペースでありました。その際は、閉店後~翌朝というスーパー過酷な深夜シフトが組まれ、体力的には相当タフでした。深夜のハイテンションでVMDをやるのも楽しかったですが 笑
本社スタッフにも、もちろん繁忙期の残業は発生しますが、あくまで一般企業レベルの時間数であって、一年を通して見ると定時退社できる時期も多いです。そもそも、椅子に座って仕事してるから体が楽ですしね。
また、アパレル企業でも、本社スタッフにはフレックス制度(拘束時間に縛られずに好きな時間に出社・退社可能な勤務体系)を導入しているブランドが増えています。フレックスのブランドのVMDになれば、ワークライフバランスが非常に充実した毎日を過ごせます。
VMD巡回で全国の店舗回り。旅行気分でもちろん旅費は会社持ち!
これはメリットと感じる人とデメリットと感じる人に分かれますが。
全国展開のブランドの本社VMDは、本社スタッフの中では出張が多い職種になります。さすがにバイヤーほどではないにしろ、それなりの頻度で出張が発生します。
主な出張理由は各店舗の巡回・VMD指導です。
※地方に支社オフィスがあるぐらい、超大規模のブランドだと、関東、近畿、九州など地域ごとに担当VMDを割り振る場合もあります。
もともと旅行好きな私にとっては、出張って会社の経費でホテルに泊まれる楽しいイベントです 笑 地方の美味しいものが食べられるのも最高。なので、同じような方にとっては、いい感じで出張が入るVMDは適役かもしれませんね。
一年間VMDにどっぷり。<好き>を仕事にすることができる
色々書いてきましたが、何よりもこれが一番のメリットでしょう。
大好きなVMDに常に触れながら仕事ができる。それでお金が稼げる。最高ですね。
これが店舗付きVMDだと、接客販売とVMD業務を兼務しないといけません。また、店長・副店長がVMDを担当するブランドの場合は、店舗マネジメントがメイン業務で、VMDはおまけになってしまうことは言わずもがな。
朝から晩までVMDにどっぷりと漬かれる環境は、この仕事が好きな人にとってはたまらなく幸せな時間になります。
好きなことを仕事にできるっていう、誰もが憧れるような職場環境を手に入れることができます。
今のブランドに固執する理由は本当にあるのか?転職という選択肢もアリ
それではご相談に戻ります。
私はこのまま今のブランドで、副店長を経験してから本社を目指した方がいいのでしょうか?
相談者様は、現在所属しているブランドに「本社勤務への昇格は副店長以上の役職経験者」というレギュレーションがあるために、本社VMDへの道がまだまだ遠く、悩まれている状態です。
また、副店長・店長などの店舗マネジメントのポジションに対してはあまり興味がないため、キャリアアップのために副店長を経験しないといけないことにも不安があるとのことです。
これは、どちらが正解でどちらが間違っているという類のお悩みではありませんが、一度冷静に考えた方がいいのが「今のブランドのVMDでないといけないのか?他社であっても本社VMDという仕事になれればOKなのか?」という点です。
VMDという役職は専門職になり、人口が少ないニッチな職業なため、スキルと経験が伴っていれば他ブランドへの転職が容易です。
また、他業種(インテリア、スーパー、家電量販店、ホームセンターなど、あらゆる小売業でVMDという仕事は存在します)も、転職先候補に入れることができるという意味では、それなりに潰しもきく職業です。
私の持論なのですが、VMDという職業は、空間把握能力と数値管理の視点さえ持っていれば、扱う商材や店舗の形状が変わってもすぐに対応できるものだと思います。これは、実際にそれなりの年数、VMDの仕事をしている人だったら、誰でも同意してもらえるはず。
相談者様はディスプレイやショーウインドウの作成といったVPだけではなく、売場戦略と数字に基づいた陳列も行っているとのことなので、「魅せるためのVMD」だけでなく「売るためのVMD」を体得していらっしゃるとお見受けします。
さすがに、いきなりVMDリーダーなどのマネジメントポジションは難しいですが、アシスタントからでもOKであれば、他ブランドや異業種の本社VMDの求人さえ見つかれば、転職することは充分可能なのではないでしょうか?
私はどちらかと言えば、今のブランドに拘るよりも、転職して一日でも早くVMD専門のポジションに就く道を選ぶべきだと思います。
私が働いていた一社目のセレクトショップのように、「店舗付きVMD経験者可」の応募条件で、本社VMDの求人があるブランドにまずは転職して、2,3年経験を積んでから、大規模ブランドにキャリアアップするっていうのが最も現実的な方法でしょう。
今のブランドで数年後に副店長、その数年後に本社VMDという道筋はかなり長いですし、ポジションに空きが出るのがいつになるのかも分からりません。
であれば、今VMD関連の求人があるブランドに積極的に応募して、まずは本社VMDという職種を経験していくのが得策かと思います。
注意:VMDの求人は非公開求人として裏で募集されることが多い
相談者様も仰っているように、VMDの求人の探し方については注意が必要です。
アパレルのVMD、バイヤーなどの本社スタッフの求人は、転職サイトにはあまり表だって公開されません。
理由としては、VMDは専門的な職業のため、転職サイトで広く求人募集しても応募条件に該当する転職者の数が非常に少なく、企業からするとよい採用に繋がりにくいためです。
また、転職サイトは、掲載に月間うん十万円なと大きな固定費が発生するため、企業側からすれば、たった一人の採用のために求人募集を大々的に掲載するのは効率的ではありません。どちらかと言えば「数打ちゃ当たる方式」よりも「見込みのある人材を狙い撃ち方式」の方が、採用活動として合理的です。
そこで、転職エージェントの非公開求人か、掲載にお金の掛からない自社ホームページの採用欄に掲載することがほとんどです。
転職エージェントの非公開求人は、「内定者一人につき〇〇円」という費用を、企業からエージェント側に支払う、いわゆる成果報酬型のビジネスモデルです。
そのため、本社VMDやバイヤーのような対象者の数が少ない職種に積極的に利用されるケースが多いです。
逆に、一度の募集で大人数を採用したい求人の場合は、掲載期間に対して固定費を支払う、一般公開求人の方が適しています。
こういった仕組みが分かっていれば、なぜ最近は、転職サイトと転職エージェントの両方のサービスがあるのかが理解しやすいですね。
VMD求人多数!私が実際に利用して高パフォーマンスだった転職エージェント
私が転職活動をしていたときは、転職エージェントをフル活用していました。
人生で二回転職をしていますが、一回目のときはまだまだ転職エージェントは我が国に根付いていなかったので、そのときからこんな便利なものがあればなーと思いました 笑
最近は転職活動をしている人の約4割が転職エージェントを使っているそうですが、上に書いたようにVMDなどの専門職は転職エージェントの非公開求人での募集が中心になるので、マストで使った方がいいです。
自力での転職活動と比べたときの主なメリットとしては
- 事前に面接やエントリーの対策をアドバイスしてもらえるので合格確率が上がる。
- 半自動で条件に合う求人を紹介してくれるので手間が大幅に省ける。
- 履歴書や職務経歴書の作成をサポートしてくれるので資料の精度が上がる。
- 年収交渉をしてくれるので希望年収に近づきやすくなる。
などが挙げられます。
各エージェントによって取引のあるブランドは異なるので、私の経験上2,3社は登録しておいた方がいいです。
さすがにそれ以上の数になってくると、管理が大変になってくるので、マックス3社ぐらいでいいかなと思います。
アパレル企業特化の転職エージェント:クリーデンス
クリーデンスはアパレル特化の転職エージェントのパイオニア的なサービスで、扱っているブランド数や、エージェントさんの対応力・提案力が頭一つ抜けています。
また、元アパレル勤務のエージェントさんが多いので、価値観が共有しやすくて話が早いです。
クリーデンスで扱っている求人全体の80%が非公開求人になるため、その中にはVMDの求人もたくさんあります。
ただ、対象地域が関東・関西・中部だけになるので、その他の地域での就業を望む人は利用できません。とは言え、アパレル企業の本社はほとんどが東京・大阪・神戸あたりに集中しているので、本社VMDを目指すのであれば問題ないでしょう。
ちなみに、就職を機に上記地域に引っ越しをする、いわゆるIターンの場合であれば、現在の居住地が地方であっても問題ありません。
全業種対応の転職エージェント:マイナビエージェント
アパレル以外の業種のVMDを探すなら、マイナビエージェントが専門職全般に強く、VMDの求人も多かったです。転職エージェントの世界ではリクルートと並んで最大手のサービスになるので、当然と言えば当然かもですが。
マイナビエージェントから、大阪にある某巨大テーマパークのグッズ売場のVMD求人を紹介してもらったことがあって、つくづくVMDっていう職業は色々な分野で求められる素晴らしい仕事だなと思ったのでした。しかも、超大手の外資だから、アパレルと比べると年収が異常なぐらい高かったし。
私は土日休み以外NGで探していたので、お断りしちゃいましたが 笑
VMDのキャリアアップを目指してひた走る相談者様に幸あれ!
私が今回の相談者様と何度かメールをしていて思ったのは、夢を追う若者のなんと美しいことか、ということでした。もう完全におっさんです。
というのも、私の場合も前述したとおり、もともとVMDメインで販売員をしていて、やっぱり本社VMDを目指していたのです。ただ、自分が結婚することを機会に働き方を見直すようになり、夢ややりがいよりもプライベートを充実させる方に舵を切ったのですね。
なので、自分が果たせなかった生き方を歩んでおられる、という意味でも、夢を追いかけて厳しい道を選ぶ相談者様を、応援せずにはいられないです。
行動すれば、必ずいい結果にむすびつくと思いますので、ぜひ前向きにトライしてみてください!
また夢に近づいたときはご報告いただけると幸いです。
アパレルのお仕事に関するお悩み相談を受け付けています
当サイトでは、引き続きアパレルのお仕事に関するお悩み相談を受け付けています。
いただいたお悩みはサイトで公開させていただく可能性がございますが、ご相談者様の特定に繋がる要素はすべて省かせていただきます。
また、公開前の下書き段階で一度ご確認いただき、必要に応じて修正いたします。
同じ境遇の方を一緒に救うことにも繋がりますので、是非お気軽にお問合せください。