雨が多い街だね-アパレル販売員からの転職者が書くブログ-

元アパレル販売員で今は転職してアパレル業界の中の人をやっている著者がファッションと関係することや関係しないことを書くブログです。

RIZINを見てつまらないと思った人のための現在の総合格闘技解説~ヒョードルもミルコも五味もシウバも青木もすでに最強では無い~

mataleao.hateblo.jp

 

上記の記事を見て、格闘技オタクだった当時を思い出しつつ、補足と言うかもう少し踏み込んだ話をしたい。

基本的にはid:mataleaoさんが書かれているように、現在はUFCと言うアメリカの老舗団体が全ての面において世界No.1の舞台であることと、かつてはPRIDEがその地位にいたことを理解した上で読んでもらえると理解しやすいかと思う。

 

かつてPRIDEは確かに世界の格闘技の最高峰だった。

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 当時、紛れもなく世界最強はPRIDEにあったのだ。

 

勿論、その当時UFCの選手とPRIDEの選手が団体の枠を越えて対戦することはほとんど無かった(参戦した一部の選手の中には実力者もいたが、トップ選手ではなかった)から断言はできない。それに、リングとオクタゴン(金網)では、同じMMAでも間合いの取り方や有効な戦法が全く違うので「もしも全盛期のヒョードルがUFCのオクタゴンで戦っていたらチャンピオンになれた」と言う仮説を証明することはできない。それでも当時、アメリカの格闘技ファンも含めて、PRIDEのチャンピオンこそが世界一だと言う認識は、ある程度共通のものだったと思う。

 

ヘビー級ならヒョードル。

ミドル級(UFCではライトヘビー級)ならショーグン。

ライト級(UFCではウェルター級)なら五味。

ウェルター級(UFCではミドル級)のダン・ヘンダーソンだけはどうかな?と言う感じだった。

 

もしかしたら、世界中が騙されていただけなのかもしれない。特にここ日本においては、吉田秀彦や小川直也なんて、総合格闘技の世界においては素人に毛が生えた程度のレベルの選手が、もっと弱い素人(多くはプロレスラーか寝技のできないK-1選手だった)に勝つ姿に熱狂していたのだ。日本独特のスターシステムだった。

 

PRIDEの常套手段はこうだ。

 

まずは素人選手とのマッチメイクで勝たせて期待感を煽る。

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次は負けると分かっているトップ選手と対戦して、一度でも見せ場があれば「最強クラスの選手に善戦」と期待感を煽る。(写真の小川の場合はヒョードルに対して善戦すらできなかったけど)

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ただ、そのスターシステムによって作られる熱狂は一過性のものだった。

元々、総合格闘技への熱意を持っておらず、現実主義者の小川直也は自分の弱さを自覚していて、ある程度の幻想をファンに持たせた状態でプロレスの世界に戻った。

吉田英彦はPRIDE後期〜戦極においては主催者側があてた咬ませ犬にすら勝てないようなり、ファンの求心力を急速に失っていった。

このやり方だけでは、一時の興味本位による熱狂は生めても、格闘技への本質的な熱意を持ち、長期的に応援してくれるコアなファンは生み出せない。弱い選手を強く見せることには時間的限界があるのだから当然だ。。ファンもそこまでバカじゃないのだ。

ただ、PRIDEが優れているのは、そう言ったエンタメ生の高い見世物的コンテンツと、競技性の高いコンテンツを両立していたことなのだ。格闘技の歴史において、この二つのバランスを成り立たせた興行は世界中のどこにも存在しない。

競技性だけを追求したUFCではなく、エンタメ性だけを追求したプロレスとも違う。

当時の主催者はそのバランスをないがしろにすることは無く、最初は客寄せパンダに寄せられたファンはいつしか最強を決める外国人同士の試合に胸を高鳴らせる格闘技ファンへと育っていった。全盛期のPRIDEは間口の広さと奥の深さの両方を兼ね備えた興行で、そこにはいつも世界最強の人物が存在したのだ。

 

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連敗を重ねる彼しか知らない人にとっては信じられないかもしれないけど、桜庭も、かつては最強だった。

ヒョードルもノゲイラも最強だった。ミルコは最強では無かったけど、MMAの技術体系を変えてしまうほど革命的な強さを持っていた。

ヴァンダレイ・シウバも、マウリシオ・ショーグンも最強だった。

「その階級の世界最強」を託せる選手がPRIDEにはいつも存在した。

 

あの選手たちはPRIDE消滅後をどう生きたのか?

 

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皮肉なのは、PRIDE消滅以降に良い戦績を残している元PRIDE選手の多くが、PRIDEではスター選手や実力者の引き立て役に回っていた選手だったり、主催者にプッシュされなかった不人気選手なことだ。ファブリシオ・ヴェウドゥム、ダン・ヘンダーソン、マーク・ハント、岡見勇信…。

 

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ミルコはUFC参戦直後は期待通りの活躍を見せたものの、じきに連敗を重ねるようになり、得意の打撃で圧倒される試合内容が続いた。試合中についに心が折れてしまった彼は、殴られ続ける痛みから逃れるためにギブアップをした。今年、復帰戦を行って劇的な勝利を飾ったものの、二戦目ではやはり心が折れてなすすべなく完敗してしまった。

 

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ヒョードルはUFCに最後まで参戦せずに、第二勢力であるstrikeforceに参戦。格下と思われた選手たちに完敗を重ね、ついには二階級下のダンヘンダーソンにKO勝利を奪われる屈辱を味わってしまった。(そんな事実を無視してRISINでは「世界最強」と謳われるだろう)

 

ノゲイラは決して悪くない成績を収め、一度はUFCヘビー級の暫定王者まで上り詰めたが、ついに無冠のまま今年ついに引退を表明した。アメリカにおいても、実力者でありながら人気選手になりきれなかったのも彼らしかった。

ジョシュ・バーネットはstrikeforceで活躍していたが、最近UFCに復帰。相変わらずの強さを見せている。PRIDE時代は上記三名の次に続くと思われていた彼が、ベテランの域に達しながらも今また着実にUFCのランキングを駆け上がっている姿は痛快ですらある。

ヴァンダレイ・シウバは決してUFCで良い戦績を残せなかったが、そのアグレッシブな戦いぶりは高く評価され、PRIDE時代に「日本人とばかり試合をして強豪から逃げている」と言われていたのが信じられないぐらい無謀とも言える戦いを続けた。ただ、最終的には抜き打ちのドラッグ検査を拒否したことで生まれた疑惑を払拭することなく、一方的に引退を表明した。PRIDE時代から囁かれていた噂はこんな形で証明されてしまった。

ショーグンはPRIDEでの爆発的な勢いそのままに、UFCでもチャンピオンの座に立ち、現在も世界のトップクラス~中堅の実力を保っている。今後もう一度チャンピオンになることは難しいかもしれないが、恐らくPRIDE⇒UFCの選手で最も成功を収めた選手だろう。

 

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五味孝典はPRIDE消滅後に、後継興行である戦極に参戦したが、PRIDE時代からあった格下へのポカを何度か見せ、最強幻想はいつしか消えてしまった。UFC参戦以降は負けが込んでおり、日本大会以外での参戦は難しくなって来ている。(UFCは戦績を残せない選手に対しては容赦なく契約を打ち切る実力主義だ)。

 

そんな歴史を踏まえたうえで、RIZINのマッチメイクはどうか?

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ヒョードル、ボブサップ、曙、桜庭、把瑠都…。

この大会に競技性はあるだろうか?本当にコレでいいんだろうか?かつてのPRIDEの負の遺産(さらにそこにサップ対曙と言う、K-1が残した最大の負の遺産も乗っかっている)だけを引き継いだ大会になってはいないか?客寄せパンダの集まりじゃないのか?このストーリー性の無いマッチメイクは次に繋がるのか?ちなみに最強を決める戦いと謳われているヘビー級トーナメントの出場者は、世界のトップ10にも絶対に入らない中堅〜弱小選手の集まりだ。

これだけインターネットで情報を得られるようになった時代に、ヒョードルがすでに最強では無いことを我々は知っている。把瑠都の対戦相手のアーツ(バンナの代役)がMMAでは弱小であることも知っている。 ボブサップがこの数年間、金のためだけに世界中で無気力試合を繰り返していることを知っている。石井慧が壊滅的にMMAに適応できないことを知っている。青木ですら世界最強の座にはほど遠いことを知っている。

そんな彼らの戦いに「最強」と連呼する主催者や実況のアナウンサーに我々は何を思えばいいのか?大晦日の祭りだ、見世物小屋だと割り切るのか?だとしたらその先に日本格闘技の未来はあるのか?

 

UFCの独り勝ち

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こうなってしまうのは、そりゃそうなんだ。今や実力のある格闘家は皆UFCで戦いたいと思っているし、資金力の面ではUFCが業界内では圧倒的な独り勝ち。MMAバブルに沸くアメリカと言う場所がありながら、日本でしか試合できない選手なんて言うのは、たかが知れているのだ。でも、現役のトップファイターを引き抜くにはとんでもない金が掛かる。現実的に向こう10年以内に、資金力でUFCを追い抜くどころか対抗できるMMA団体が生まれることは無いと断言してもよくて、つまりはRIZINがビッグネームを引き抜くことはできないし、過去のPRIDEのように最強を決める戦いは実施されない。であれば、格闘技の本質的な面白さを伝えることはできず、かつてのようなファン獲得→固定化のサイクルが作れなくなる。

こう考えると、RIZINが作り出そうとしている日本格闘技復興への道は、客寄せパンダばかりが集まった見世物小屋への道しか選択肢は無い。トップグループの選手は百人単位ですでにUFCに囲われている。

かつて存在した世界最強が日本に存在することは、もう無いのだ。

 

【2016/06追記】

DVDが発売されましたが、amazonのレビューもゼロ。ブルーレイじゃなくDVDオンリーだったり、なんかもうイケてない感がプンプンと…。継続的に大会が開催されることもなく、どうなるRIZIN。

 

 

 

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