売れないアパレル業界で10年以上働いていてリアルに感じる流れ
▼2020年4月追記
コロナウイルスの流行にともなう緊急事態宣言の発令に合わせて、しばらくお休みしていたブログを再開しています。
こちらの記事を書いたのは2年以上前ですが、現実はもっとシビアでした。
今やアパレル業界では倒産を間近に控えた会社が激増。生き残ったブランドもリアル店舗は完全に縮小してECシフトの流れが確定的になりました。「販売員を続ける」という選択肢が限りなくゼロになっている現在、この記事に書いている内容も一部、古い情報になってしまったと感じています(今のアパレル販売員の立場は「辞めるか辞めないか」じゃなくて「少しでも早く辞めて命と生活を守れるか」のフェーズなため)。
ということで、現在の状況について書いた下記記事も、合わせてご一読ください。
(追記ここまで)
店舗閉鎖、倒産危機…落ちていくブランドが続々と
私は10年弱、販売員を続けたのちに、今は広告代理店でアパレル企業と深く関わっているため、アパレル業界に長く身を置いていることになります。
「アパレル業界がヤバイ」と言うのは、私が働き始めたころからずっと言われていることでした。もはや、その言葉を聞きすぎて何も感じなくなってしまってるぐらい、アパレル業界の人間にとっては耳タコな話題です。
ただ、最近は代理店の立場で各ブランドの担当者と話をしても「崖っぷちに近い」「これから2,3年が勝負」と言った言葉を頻繁に耳にします。どこか対岸の火事と思っていた私も、さすがにこれは…と思ったのでした。
お洒落にお金を使う時代では無くなっている
日本に多くのファストファッションブランドが出店を強めたゼロ年代中盤から、日本人のファッションへの感覚が変わったように感じます。H&Mが黒船、なんて言われてましたけどまさにその通りで。
ただ、その頃はファストファッションって「安い割におしゃれ」「ファスト系の洋服はコーディネートの目立たない場所に使う」と言う認識だったのですが、今はそんな時代ですら無くなっています。
ユニクロとGUが、ファミリー層だけでなく全年齢層に勢力を強めて来ていることがその要因かなと思っていて。
実際、最近でもルメール、ジルサンダー、カウズとのコラボとか、GUのイメージ戦略とか、感度の高い層への訴求が本当に上手いんですよね。カウズのTシャツを近所のおばちゃんが着てるとかマジかよって思いますが 笑
一昔前のユニクロのと言えば、「安いけどダサい」「家着にフリースやヒートテックを買うぐらい」など、ファッション用途での使用には耐えられないと言う認識が一般的でした。ユニバレ=自分の着ている服がユニクロとバレてしまう。という言葉があったように、普段着としてユニクロを着ていること=恥ずかしい。と言う感覚でした。
それが、今やメンズ・レディース問わずファッション雑誌の表紙には「ユニクロで賢くお洒落」「プチプラアイテムで1週間着回しコーデ」など、コーディネートの主役はファストファッションになっています。
実は私自身もいわゆるファストファッションブランドとして括られるブランドのうちの一つで勤務していたことがあるのですが、入社した当時よりも退職した数年後の方が、明らかにお店にファッション感度の高いお客様が増えた感がありました。
安く済ませるため、ではなく外出時のお洒落着としてファストファッションブランドを選ぶ。そんな選択肢がファッショニスタの間ですらアリになっていることを肌で感じていたのです。
それは、日本人の中で「おしゃれ」って言うものに対する考え方が変わっていることにも起因するのではないかと思います。いわゆる、ノームコア的な考え方です。
断捨離ブーム、ノームコアブーム…時代はシンプルを求めている
日本が経済的に貧しくなって格差社会が広がっている、などの社会的背景も当然ありながらも、そもそも世界的にファッションの好みがどんどんシンプルな方向に行っているのがデカイです。
ノームコアという言葉が持て囃されたのは2010年代前半ですが、「ファッションで頑張りすぎない」「ライフスタイルの中に溶け込むファッションを」「不要なものは断捨離を」と言う感覚は、今も確実にお客様の中にあります。
実際、私も休日は白T・デニム・ニューバランス・黒縁メガネ・ベースボールキャップって言う、ノームコア・サードウェーブ男子の典型例みたいな格好をしてる時が結構多いです 笑
「シンプルな服装で格好つけすぎないぐらいが丁度いい」って言う感覚は、アパレル業界でずっと働いている私ですら、ここ数年は強く持っているのです。
それでも、裏原系ブームやセレクトショップ全盛の時代を過ごした私としては、<ブランド>と言う価値に対してお金を払うこと、<どこで買うか>を一つのステータスと考える感覚がまだ残っているのですが、恐らく今はその感覚こそダサいものになっているのではないかと感じます。この感覚の違いって、あまり言語化されていないのですが、30代以上のファッション好きならなんとなく分かってもらえるんじゃないかなーと思います。
実際、私も前までよりも服にお金を使わなくなってます。仕事のキャリアアップとともに、経済的にはそれなりに豊かになっているにも関わらず、です。
ただ、安くすりゃブランドが成功するって言うわけでないのも事実 。
最近だと、オールドネイビーの日本撤退のニュースが最たる例でしょう。オールドネイビーの洋服が受け入れられなかった、と言うわけではなく、値引き競争でブランド自体が短期間で一気に消耗していったと言うのが、要因と考えられます。
お客様が安いものを求めている=値引きすれば儲かる。と言うわけではないのが、ビジネスの難しいところで、ここで日本中のブランドが悩んでいます。
勝ち組・負け組の格差が顕著化する流れ
「強いものがさらに強くなり、弱いものは淘汰される。この傾向がさらに進む」。伊藤忠商事の小関秀一代表取締役専務執行役員繊維カンパニープレジデントは、今年の繊維・ファッション業界をこう予測する
これは2017年初頭の業界予測ですが、間違いないです。売れるブランド・売れないブランドがハッキリと別れていく流れは止められません。
これはアパレル業界だけでなくすべての業界の流れですが、ネットで情報を得られるようになる中で、消費者の趣味趣向が画一的ではなくなっています。音楽業界でもテレビ業界でも「みんなが知ってるヒット作」はなくなりました。アパレルも同じことです。
であれば、生き残るのは、圧倒的資本力と数の力で押し切る大手か、ニッチだけどオリジナルな商品・戦略をもって戦えるベンチャー的思考を持った中小になってくるでしょう。ありきたりな言い回しですが、価格だけでない付加価値をどうやって付けて提供するのか?が問われる時代です。