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【アメトーーク!読書芸人】『教団X』のamazonレビューがヒドいことになっている件

 

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アメトーーク!の読書芸人を見た

 

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先日、テレビ朝日系列のテレビ番組『アメトーーク!』にて<読書芸人>と言う企画が放送されました。

内容は、小説家としても活躍しているピースの又吉さんを始め、オードリーの若林さんオアシズの光浦さんと言う読書好きとして知られる三名が司会の雨上がり決死隊に、おすすめの本や、読書の楽しみ方を話すと言うもの。おそらく又吉さんの小説『火花』の記録的ヒットを受けての第二弾と言うことでしょう。

 

読書、とりわけ純文学を好む私は「さすがに皆分かってるねえ」と感心しながら見ていたのですが、番組内で又吉さん>、若林さんの二名が揃って推薦していたのが中村文則さん『教団X』でした。

 「プロの作家に"オススメの小説ありますか?"って言ったら、この作品を答える人が多い」(若林)

「読み終わった時は10年に1回あるかないかの感覚だった」(又吉)

 と大絶賛のコメントが並び、実際に放送後の反響は非常に大きく、現在本屋では品切れ状態が続いているとのこと。

 

news.livedoor.com

 クソみたいなまとめ方をすることに定評のあるライブドアニュースにも、しっかりまとめられています。

 

amazonのレビューが荒れている

 

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本屋に無けりゃamazonで買おうと思う人も多いでしょう。しかし、amazonの『教団X』のページを見ると、レビューの点数がとんでもなく低い! 

 

 

まずはこちらから教団Xのamazonレビューを確認してみてください。

 

 

確認してみましたか?

内容を見てみると、かなり極端な物言いのレビューが目立ちます。具体的に見てみましょう。

 

これが『教団X』の最も参考にされているレビューだ! 

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低評価!

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低評価!

 

アメトーーク!放送直後に購入したと思われるレビュアーの投稿は総じて低評価です。

「意味が分からない」「ストーリー性が無い」「性描写が多い」などの理由の元、皆さん星1つの評価です。

他のレビューも見ているとステマ扱いする投稿もチラホラ。

 

しかし、本当に そうなんでしょうか?

 

なぜ低評価のレビューばかりになるのか?

 私は、これってジャンルの違いが認識されないことで生んだ現象だと思うんですよね。

 

もう少し具体的に書くと、純文学って言うジャンルをよく分かっていない人がレビューを書いたのではないか?と言うことです。

 

中村文則さんって純文学の作家なわけです。そして、かなり作家性の強い人だったりもします。純文学って何?って言う人は詳しくはググってもらうとして、まあ平たく言えば純文学って一般受けを狙った小説じゃないんです。ストーリーに分かり易い起承転結が無いような作品も多くて、暴力描写や性描写は激しくて当たり前、不道徳的な内容はザラなんです。

この例えがふさわしいか自信ないですが、純文学を読んでいるとエヴァの最終話みたいな展開がゴロゴロあります

 

「そんな小説の何が面白いの?」と思う人もいるでしょう。実際に、世の純文学好きは、そう言った批判の言葉を今までの人生ですでに何度も受けています 笑 そして、純文学好きは世間とは分かり合えないのだとすでに悟ってもいます。

でも面白いと思うんだからしょうがないんですよ。音楽に例えますけど、「ヒップホップって喋ってるだけなのに何がいいの?」って言うのも愚問でしょ?でも一定数のファンがいることも事実ですし、純文学にストーリーが無かろうが、一定ファンがいるのもコレと同じです。

 

又吉さんと光浦さんが別作品をそれぞれ推薦していた町田康さんの小説にしたって、エンタメ小説に比べたら分かり易いストーリー性なんて無いし、下品な笑いがいっぱいなワケですよ。例えば番組内でも紹介されてた『人間小唄』の紹介文はと言うと、、

小角が書き送った短歌を自分の文章に無断で引用した作家・糺田両奴。国民の無意識に影響を及ぼして駄目にする奴の文学を根底から破壊する!こちらの世界に拉致してきた糺田に課した難題は、「一、短歌を作る。二、ラーメンと餃子の店を開店し人気店にする。三、暗殺」。それは魂のテロルの始まりだった。劣化する感性を粉砕する、破壊力抜群の傑作長編!

こんな感じです。

 

代表作の『夫婦茶碗』の紹介文は、、、

金がない、仕事もない、うるおいすらない無為の日々を一発逆転する最後の秘策。それはメルヘン執筆。こんなわたしに人生の茶柱は立つのか?!あまりにも過激な堕落の美学に大反響を呼んだ「夫婦茶碗」。金とドラッグと女に翻弄される元パンクロッカー(愛猫家)の大逃避行「人間の屑」。すべてを失った時にこそ、新世界の福音が鳴り響く!日本文芸最強の堕天使の傑作二編。

こんな感じです。

ね、ワケ分かんないし下品そうでしょ?

 

近代の純文学で最も売れた村上春樹さん『ノルウェイの森』だって、ヒロインが脱いだパンツで主人公を手コキするって言う描写があったりもするワケです。

そう言った、決して分かり易いとも上品とも言えない小説を、好きか嫌いかは人それぞれだし、純文学がエンタメ小説よりも優れてるなんてバカなことを言うつもりもさらさらなくて、単純に純文学って、ただ圧倒的にそう言うものなんですよ。

 

そう考えると『読書芸人』って言う番組側の括り方がミスリードを生んだ気もしなくもありません。さすがに『純文学芸人』では番組を作れないし、実際に純文学以外も紹介されていましたから、しょうがないかとは思いますが。

これはまた音楽で例えますが、

『小説』って言う大きな括りで様々なジャンルを一緒くたにするって言うのは、『音楽』って言う大きな括りでポップス、ロック、ヒップホップ、ジャズ、ハウス、etc...の様々なジャンルを一緒くたにすることと同じです。

最初から純文学ってそう言うもの。って言う認識があれば、このレビューも生まれなかったのではないかと思います。 

ちなみに『しゃべくり007』でくりいむしちゅーの有田さんが『イニシエーションラブ』を紹介した時も似たように大ヒットしましたが、あの小説はかなりエンタメ寄りのミステリーだったので、ここまでの評価の落差は無かったように思います。

 

好きな小説を紹介したらステマ扱い

 

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繰り返しになりますが、読書好き、ましてや純文学好きなんて言うのは、世間的には圧倒的に少数派です。断言できますが、出版関係の企業や大学の文学部などに所属していない純文学好きが普通に生活していて、自分と読書の趣味が合う人と偶然出会う確率は天文学的な数字です。これは、自分の好きな音楽や映画が合う人と出会う確率よりも圧倒的に低い数字です。

 

なので、たまにオススメを聞かれて答えても理解してもらえないなんて言う経験はザラでして、番組内でゲストの三人が「オススメの本を聞かれて答えても、意味が分からなかったと言われることもある」「相手の趣味が分かっていたら、それに合わせて答えることはできるけど、そうじゃないと難しい」と言った内容を話していて、その事態が今まさにリアルタイムでamazonで繰り広げられているのだから、すでにこう言った反響がある事は本人たちも分かっていたのではないかと思います。

って言うか自分の好きな小説を紹介しただけで「ステマ」と言われるって、芸能人ツラすぎですね。又吉さんも若林さんも前から中村文則さんの小説が好きなことを公言してたはずなんですが。

 

このあたりの、ジャンルの違いとか棲み分けが一般の認識としてなされていないところが、まだまだ小説や文学が、文化として成熟していない証拠なんだなと思います。映画や音楽でも同じようなことはあるけど、よりニッチな趣味なので、生まれる祖語はもっと大きいですよね。

 

ともあれ、amazonのレビューを見る時には「そのレビュアーが作品のジャンルにマッチしているか」を考慮してから、参考にした方が良さそうです。

 

 



 

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